プロ15年目で初出場を果たした男が、球宴初打席でいきなり本塁打を放つ快挙が実現したのが、2016年の第1戦(ヤフオクドーム)だ。

 監督推薦でオールスターに初めて選ばれた栗山巧(西武)は、2008年に最多安打のタイトルを獲ったのをはじめ、毎年打率3割前後をキープし、ベストナインに選ばれること3度。2010年にはゴールデングラブ賞を獲得。文句なしの一流選手と呼べるほどの実力者がこれまで1度も出ていないこと自体、球界の七不思議のひとつとしか言いようがなかった。  

 そして、球宴の大舞台で、野球の神様は最高のプレゼントをもたらす。7回表からレフトの守備固めで途中出場した栗山は2対5とリードされた9回裏、無死一塁で、広島の守護神・中崎翔太の143キロ直球をフルスイング。右中間席に突き刺さる2ランを放つ。

 球宴の初打席本塁打は、1974年の高井保弘(阪急)と2007年の森野将彦(中日)の11年目を抜いて、最も遅咲きという珍記録でもあった。

 それだけに栗山は「一生忘れないホームランになりました。(守りで)ミスしたあとでしたし。オールスターっていうのは、テレビで観るもんだっていう、なんか僕の中でありますし、選んでくださった工藤(公康)監督には感謝したいです」と半ば夢見心地で喜びを語った。

 栗山は第1戦での敢闘賞受賞に続いて、翌日の第2戦(横浜)でも二塁打を含むマルチ安打を記録し、これまでの不遇の日々を一気に塗り替えた。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2018」上・下巻(野球文明叢書)

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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