
2019年シーズンのオールスターゲームが12日から始まる。今年もスターたちがどんなプレーを見せてくれるのか楽しみだが、懐かしい球宴でのニュースを求める方も少なくない。こうした要望にお応えすべく、「プロ野球B級ニュース事件簿」シリーズ(日刊スポーツ出版)の著者であるライターの久保田龍雄氏に、過去のオールスターでの“B級ニュース”を振り返ってもらった。今回は「オールスター珍記録編」だ。
球宴史上初の三重殺が見られたのが、1982年のオールスター第3戦(大阪)だ。
7回に代打・田尾安志(中日)のタイムリーで1点を勝ち越された全パはその裏、全セの3番手・郭源治(中日)に食い下がり、島田誠(日本ハム)の四球のあと、河埜敬幸(南海)の右前安打で無死一、三塁のチャンス。三塁走者・島田は前年42盗塁を記録した足のスペシャリストだけに、内野ゴロでも十分同点にできそうなケースである。三塁コーチを務めていた阪急・上田利治監督も「ゴロなら突っ込め!」と指示した。
そして、次打者・大宮龍男(日本ハム)は、初球を狙い打ち、強烈なゴロを放つ。打球は併殺狙いで中間守備をとっていたショート・真弓明信(阪神)の正面へ。真弓はセカンド・篠塚利夫(現・和典)(巨人)に送球し、篠塚からファースト・掛布雅之(阪神)に転送される。送球がライト側にそれ、一瞬ヒヤリとさせられたが、急造一塁手の掛布が体勢を崩しながらも、間一髪アウトにした。
ところが、6−4−3の併殺の間に当然同点のホームを踏んでいると思われた三塁走者・島田があろうことか、「大宮の当たりが良く、見とれてしまった」とスタートを切るのが大幅に遅れてしまう。しかも、いったん三塁で自重しかけたのに、悪送球で掛布がコケそうになったのを見て慌てて本塁に突っ込んだことから、「立ち上がって見たら、三塁走者が走り出した。思い切って放ったよ」という掛布の一か八かの本塁送球でタッチアウトに……。試合も全セが3対2で逃げ切った。