■前後の車体がぶつかる寸前の急カーブを曲がる

 大谷と上栄町の間が、いよいよ京津線“山岳鉄道”区間のハイライト・逢坂越えになる。800系はモーターをうならせて、40パーミルの上り急勾配に挑む。けれど直線区間では時速75キロを維持し、さすがの高性能ぶりを発揮している。京津線の逢坂山トンネルは長さ250メートル。その暗やみを抜け出したとたんに、半径45メートルの急カーブに入る。

 その後も連続する半径40メートル台の急カーブの制限時速は15~20キロ。線路をまたぐ国道1号の跨線橋からびわ湖浜大津方面の線路を見下ろすと、通過時の車体同士の“ずれ”が際立つ。連結幌(ほろ)を挟んで前後の車体の左側はぶつかる寸前にも見え、一方の右側はちきれんばかりに大きく開いている。ファンから“直角に曲がる”といわれるほどのすさまじさで、車輪とレールが接する「キイキイ」という擦れ音も大きく響く。

 京津線の勾配は逢坂山トンネルを抜けた先の、びわ湖浜大津側のほうがよりきつい。40パーミルから41.1パーミルへ、そして国道1号をくぐるあたりに最急の61パーミル区間が続く。下りきった直後にも左急カーブがあるため、列車はゆっくりと通過していく。上栄町を出たところに、全線で最小となる半径40メートルの急カーブがあり、線路には発熱防止のためか列車の通過に合わせて、スプリンクラーで水がまかれている。

■全長66メートルの路面電車と江戸期の曳山との“競演”

 急カーブを左へ曲がると、電車は約600メートルにわたって続く国道161号との併用軌道に入る。交差点の手前で電車が停まるとまもなく、電車の進行を可とする黄色い矢印信号が点灯。自動車側は赤信号になる。通常の路面電車には、編成全長で30メートルの制限が課せられている。800系4両編成は計66メートルあるが、この区間のみは特例による運行が許されている。

次のページ
大津中心市街地を横断