そして2009年から民主党が政権を運営する。ところが、東京大生は依然として自民党への支持が高い。菅直人と小沢一郎の対立といった民主党内のごたごたから、政権運営に不安要素を感じたのだろうか。あるいは社会のあり方を考えるよりも、自分の将来を見据えて秩序安定型の自民党にこれまで以上に期待したからだろうか。

 当時、東京大生だったある社会人は、「民主党政権に対する関心度はそれほど高くなかった」と振り返る。東京大と世間のズレがもっとも生じた期間であり、功利的で現実重視の東京大生らしさをうかがわせる一幕だったといえるかもしれない。

 2013年 自民党27.3% 民主党4.1%
 2016年 自民党30.3% 民進党4.5%

 そして、2012年、安倍政権が再び誕生し、東京大生の自民党への支持率は高まっていく。これは安倍政権の政策面が評価されたからだろうか。

「アベノミクスなどの政策が積極的に支持されたというわけではないでしょう。よく言われる保守化ということでもないと思います。民主党に対する期待が失望に変わり、自民党しかないという消極的な支持ではないでしょうか。各種の世論調査をみる限り、そのことは国民一般にも当てはまります」(中北さん)

 2019年、東京大生の自民党支持率は21%。近々、安倍政権が憲法改正を進めていくと、学生はどんな反応を示すのか。

 18歳選挙権の導入で、学生が政治に関心を示す機会は増えた。だが、学生の投票行動は政党もメディアもなかなか読みにくい。学生の心を揺さぶるような政策を打ち出すことには、どの政党も成功していない。

 7月に実施が見込まれる参議院選挙で、各政党が学生に何をどれだけアピールできるか。国政を占う上で、案外、このあたりはポイントになるかもしれない。

(文=教育ジャーナリスト・小林哲夫