札沼線新十津川駅に停車する“日本一早い最終列車”のキハ40形気動車(撮影/武田元秀)
札沼線新十津川駅に停車する“日本一早い最終列車”のキハ40形気動車(撮影/武田元秀)
留萌本線の部分廃止で終点となった留萌駅。全線廃止が取り沙汰されている(撮影/武田元秀)
留萌本線の部分廃止で終点となった留萌駅。全線廃止が取り沙汰されている(撮影/武田元秀)
長期不通が続く日高本線新冠(にいかっぷ)駅付近の赤さびた線路(撮影/武田元秀)
長期不通が続く日高本線新冠(にいかっぷ)駅付近の赤さびた線路(撮影/武田元秀)

 時代が「令和」を迎える直前の2019年3月31日、JR北海道の石勝線夕張支線(新夕張~夕張間)が最後の列車の運行を終え、1892年の開業から127年の歴史に幕を閉じた。道内ではこのほか、札沼線(学園都市線)の北海道医療大学~新十津川間の2020年5月7日限りの廃止が決定。さらにJR北海道は2018年6月に国交省と道と協議し、留萌本線深川~留萌間の全線と、災害により長期不通が続いている日高本線の鵡川(むかわ)~様似(さまに)間、根室本線の富良野~新得間の廃止方針を示している。“風前のともしび”ともいえる、北海道3路線の現状はどうなっているのか。

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■鉄道ファン以外の乗降客がいない1日1往復の終着駅

札沼線北海道医療大学~新十津川間

 札沼線は桑園(そうえん)~新十津川間を結ぶ76.5キロの路線で、途中の北海道医療大学までは電化され、札幌市の近郊通勤・通学路線となっている。一方、北海道医療大学~新十津川間47.6キロは非電化のままで、通常短い編成の気動車(ディーゼルカー)が行き来するばかりのローカル区間。北端の浦臼(うらうす)~新十津川間に至っては、1日わずか1往復。新十津川に朝到着した始発列車が、そのまま最終列車として折り返す。

 国土交通省が2019年に公表した17年度のデータによると、北海道医療大学~新十津川間の輸送密度は1日あたり57人。1500万円の年間営業収入に対し、経費は3億2900万円で、赤字額は3億1400万円に達している。「これではやむを得ない」と、沿線の当別・月形・浦臼・新十津川の4町は廃止に合意。20年5月7日限りの同区間廃止が決定した。

 新十津川行きの始発列車は、北海道医療大学のひと駅桑園寄り、石狩当別(いしかりとうべつ)を7時45分に発車する。キハ40形の1両編成で、白いボディーに黄緑色の帯。ドア部分が緑色に塗られているのが札沼線用車両の特徴という。7時38分に札幌から石狩当別までの接続電車が到着すると、通学の若い男女が続々と乗り込んできて、あっという間にすし詰め状態に。ただし、それも数分間。北海道医療大学でほとんどの乗客が降り、車内に残ったのは鉄道ファンらしい人たち十数人を除けば、学生服姿の少年が5人だけになった。

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片面ホームだけがぽつんと置かれた“秘境駅”