巨人は第3次・原辰徳体制のもと、ここまでは好調な戦いぶりを見せている。FA市場の目玉だった丸佳浩を広島から獲得し、西武からは炭谷銀仁朗を補強。ほかにもメジャー帰りの岩隈久志、オリックスを自由契約となった中島宏之、そして新助っ人としてビヤヌエバやクックを獲得するなど、ストーブリーグを独走した成果が出ている。
昨年はなんとかAクラスに滑り込んでクライマックスシリーズ進出にはこぎつけたものの、セ・リーグ優勝の広島とは実に13.5ゲーム差もつけられた。その屈辱的な大敗がオフの大型補強敢行につながったわけだが、貧乏球団だった広島に大きく遅れを取る契機となったのが「2007年」だった。
巨人関係者は2007年を「憂鬱の年」と呼ぶ。指摘したのは鹿取義隆元GMだ。この年は第2次体制2年目の原辰徳政権が空前の三つ巴戦を制してリーグ優勝した「歓喜のシーズン」だったはずなのになぜか。
球界は「一場事件」(2004年ドラフト自由枠での獲得を目指していた複数球団が一場靖弘(当時・明治大学)に対し、日本学生野球憲章に反して現金を渡していたことが発覚した事件)の再発防止策として、ドラフトの逆指名制度(自由獲得枠)を前年に撤廃した。07年は高額な契約金で有力選手が獲得できなくなった「機会均等のドラフト年」だったから、巨人にとっては憂鬱なのだ。
この年を境に「札ビラ攻勢」の巨人・ブランドが役に立たなくなった。そして、07年に広島にドラフト入団したのが、丸、安部友裕、松山竜平。以後、14年までに野村祐輔、鈴木誠也、大瀬良大地がドラフト上位で次々に入団し、3連覇の原動力になった。もし07年以降も逆指名制度が続いていたら、こういった有力選手をドラフト上位で獲得できた可能性は低く、広島の3連覇はなかったろう。
ちなみに、07年に巨人がドラフト指名した選手で、現在も巨人に在籍している現役選手は一人もいない。「一場事件」では渡邉恒雄オーナーが引責辞任しているだけに、憂鬱度はさらに増す。