富士フイルムのXシリーズではミドルクラスとなるT2ケタ機が30へと進化。センサー、エンジンは上級機と同等。価格は約11万8000円(ボディーのみ)。有効画素数約2610万画素。大きさは118.4×82.8×46.8ミリ。重さは約383グラム。
富士フイルムのXシリーズではミドルクラスとなるT2ケタ機が30へと進化。センサー、エンジンは上級機と同等。価格は約11万8000円(ボディーのみ)。有効画素数約2610万画素。大きさは118.4×82.8×46.8ミリ。重さは約383グラム。
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 富士フイルムからX-T20の後継モデルとしてX-T30が発売された。最大のアップデートポイントは撮像素子がX-T3と同じ約2610万画素のX-Trans CMOS 4センサーになったことで、AF性能が格段に向上。特に瞳AF時にもコンティニュアスAFが高精度かつ高速に追従してくれるため、深度の浅い大口径レンズを使ったポートレート撮影や、動きのある人物スナップがすごく撮りやすくなった。操作系は十字キーが廃止され、その代わりにジョイスティック状の8方向レバーを新採用したことで、AF測距点の手動移動もX-T20より行いやすくなっている。外観は前方から見るとX-T20とあまり変わらないが、背面のチルト式液晶モニターが薄型化され、従来よりボディーがスリムになっている。塗装も見直され、シルバーモデルについてはX-T20の白っぽいシルバーから、ややガンメタがかった深みのあるシルバーに変更されているのも大きな変更点だ。

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フィルムシミュレーションでACROS+Yeフィルターを選択。粒状性を付加し、さらに新たに備わったモノクロ調整機能でやや冷黒調にした。モノクロの作り込み自由度は恐らくどこよりも高い。新しい16ミリレンズはX-T30やX-T3と組み合わせたスナップに最適。35ミリ判換算で24ミリ相当の広角だが、画面の隅々まで乱れのない画質を得られる■X-T30・XF16mm F2.8 R WR・絞り優先AE(f7.1・340分の1秒)・-1.7補正・ISO160・WB:オート・JPEG
フィルムシミュレーションでACROS+Yeフィルターを選択。粒状性を付加し、さらに新たに備わったモノクロ調整機能でやや冷黒調にした。モノクロの作り込み自由度は恐らくどこよりも高い。新しい16ミリレンズはX-T30やX-T3と組み合わせたスナップに最適。35ミリ判換算で24ミリ相当の広角だが、画面の隅々まで乱れのない画質を得られる■X-T30・XF16mm F2.8 R WR・絞り優先AE(f7.1・340分の1秒)・-1.7補正・ISO160・WB:オート・JPEG

 上位機種X-T3との差違は、EVF解像度が約369万ドットではなく約236万ドットにとどまること、ファインダー倍率が0.75倍ではなく0.62倍、連続撮影可能枚数が約半分以下、4K動画が60pではなく30pまで、SDカード対応がUHS-IIではなくUHS-Iまで、メカシャッターの最高速が8000分の1秒ではなく4000分の1秒、液晶モニターが3方向チルト式ではなく2方向の普通のチルト式になることなどなど。こうした差違が自分の撮影用途にあまり影響ないならX-T3よりもお買い得だ。逆にX-T3より優れているのは小型・軽量であること。156グラムも軽いのは、足で稼ぐスナップ用途では大きなアドバンテージである。ちなみに今回同時に発表されたXF 16ミリメートルF2.8 R WRレンズの重さが155グラムなので、X-T3とX-T30では軽量レンズ1本分くらいの重量差。この違いは結構大きいと思う。

XF16mmF2.8 R WR X-T30にベストマッチな小型・軽量レンズ。35ミリ判換算24ミリとなる広角レンズだ。シルバー鏡筒もある
XF16mmF2.8 R WR X-T30にベストマッチな小型・軽量レンズ。35ミリ判換算24ミリとなる広角レンズだ。シルバー鏡筒もある

 撮像素子と画像処理エンジンの組み合わせがX-T3と同じになったことで、画質や性能面はX-Pro2やX-H1といった上位機種を追い越す下克上状態になった。もちろん、それらの上位機種も将来的にはアップグレードされるだろうが、いま手に入るフジのAPS-C機としてX-T30は相当に魅力的なのは間違いない。個人的には各社からフルサイズ機が続々と登場している今だからこそ、機動性と画質のバランスが抜群にいいカメラを作ることができるAPS-C機に可能性を感じる。他社にもAPS-Cミラーレス機はあるが、その多くの上位レンズはフルサイズと兼用なのでAPS-C機にとっては無駄にデカい。上質なAPS-C専用レンズがどこよりもそろっていることを含め小型・軽量で基本性能がバツグンに優れたX-T30のカメラ偏差値は驚くほど高い。

撮影・解説 : 河田一規

アサヒカメラ2019年4月号より抜粋