メジャーデビュー前のヒメネスとホワイトソックスが長期契約を結んだのも、このスネルのような思惑が双方にあったことは想像に難くない。そもそも6年契約ということは、ヒメネスが無事に主力としてその期間を過ごせたならば、契約満了と共にFA権を取得できることを意味する。実質的には年俸調停権の放棄だけ、というところも落としどころとしては絶妙だ。
問題はヒメネスがメジャーデビュー後に期待どおりの活躍をできなかった場合だろう。ちなみにメジャーデビュー前に契約延長を果たしたのはヒメネスがメジャー史上3人目。1人目は2014年に5年1000万ドルでアストロズと契約したジョン・シングルトンだが、彼がメジャーでプレーしたのは2年目までの合計114試合のみ。打率1割7分1厘、14本塁打、50打点と大きく期待を裏切り、2018年5月には解雇されてしまった。
2人目は2018年にフィリーズと6年2400万ドルで契約合意したスコット・キングリー。メジャー1年目の昨季は主に遊撃手として147試合に出場して打率2割2分6厘、8本塁打、35打点、10盗塁という成績だった。まずまずではあるが期待の高さに応えたとは言い切れず、今季は実績のあるジーン・セグラ遊撃手の加入で出場機会が限られ、4月20日には負傷者リスト(IL)入りをしている。
果たしてヒメネスはシングルトンやキングリー以上の活躍を見せることができるのか。開幕から20試合に出場した時点での成績は、打率2割3分1厘、3本塁打、8打点。やや苦しんではいるが、4月12日のヤンキース戦では1試合2ホーマーと才能の片りんは見せている。前述のスネルや、8年1億ドルでブレーブスと契約延長した昨季のナ・リーグ新人王ロナルド・アクーニャ外野手も含め、各球団がチームの屋台骨を背負うに足ると見込んだ若手有望株たちの行く末は、長い目で見守っていきたい。(文・杉山貴宏)