大久保:東京などでは、(弁護士の)常勤派と非常勤派で意見が分かれています。
藤林:契約弁護士という外側の立場よりは、非常勤・常勤といった一緒にチームプレーができるポジションでまずは入れたらいいと思います。非常勤よりも常勤を勧める理由は、もう一つ別にあります。常勤弁護士を入れた後の予想していなかったメリットとして、児童相談所の日常的な業務についていろいろ助言をしてくれるということがあります。弁護士が、児童相談所の古いやり方に黙っているはずがありません。所長にとってはそこを突かれると痛いなあと思っていたところをズバリ突いてくるのです。
指摘されたのはたとえば、一時保護所に子どもがずっといるのはおかしいのではないか、ということです。なんの根拠で子どもがここにいなきゃいけないのか、ということも考えさせられました。今さらですが、一時保護所に子どもから意見を聞く意見箱を設置し、その意見に丁寧に応えていくことにしました。他にも一時保護所の改革を次々と進めていきましたが、それも久保さんに言われたことがきっかけです。
子どもの意見表明権を保障するとはどういうことかということも、私も含めて職員が学びました。施設や里親に措置している子どもと児童福祉司が年に1回、そこでどのようなケアを受けているか確認するのですが、その面接を「子どもの権利面接」と名付けました。
これは久保さんではなく、子どもの意見表明権を学んできた職員からの提案です。
大久保:藤林さん自身は、常勤と非常勤、どちらに賛成ですか?
藤林:絶対に常勤です。悩む暇はありません。久保さんは最初は任期付き職員でしたが、2016年度から市の恒久的な一般職員になりました。児童福祉の経験のない弁護士に務まるのかという声もあるようですが、法的バックグラウンドがあるなら、児童福祉について学んでもらいながら十分務まると思います。
児童相談所が子どもの安全をどうやって守るのかというと、法律で守るわけで、法律を駆使できる専門職がいるのは当然の帰結だと思います。情熱と気合で守っているわけではありません。説得で守るわけでもありません。法的に守るわけですから。そこが従来の児童相談所と弁護士が入った児童相談所の違いかもしれません。