──2月27、28日には米朝首脳会談が開かれます。激変する朝鮮半島情勢に、日本だけが孤立しているようにも見えます。
トランプ米大統領の国内的立場を考えると、米朝首脳会談で何の成果もなく、決裂するとは考えにくい。さらに、非核化と引き換えに韓国・北朝鮮・米国・中国による4カ国の終戦宣言に向けて進展があるかもしれない。
やはり日本が外されることは具合が悪い。日本は、朝鮮戦争で後方支援の役割を果たしました。国連軍の後方司令部は横田飛行場(東京)にあります。日本も終戦宣言に参加する資格はあり、積極的に関与していかなければなりません。
また、南北間ではすでに北朝鮮の開城(ケソン)で連絡事務所が開設されています。会談が成功すれば、米朝でも連絡事務所を開設するかもしれない。そうなれば、北朝鮮との窓口を持っていないのは日本だけになる。日本が韓国に「けしからん」と怒っている間に事態は急速に動いていて、日本だけが取り残されることになりかねません。
──2014年以降、北朝鮮は日本政府に対し、拉致被害者の田中実さんが平壌で生存していると伝えていたと報道されています。一方で、その後に拉致問題が進展したとの話は聞こえてきません。北朝鮮とのルートは、現在の外務省に残っているのでしょうか。
それはわかりません。私も外務省を離れてから15年近く経っていますので。ただ、これは繰り返しになりますが、日本にとって朝鮮半島はとても重要です。政治家も外交官も中長期的な視点に立って考えるべきで、手をこまねいて待っているだけであってはならない。対話のルートは維持されていると期待したい。
──今の日本のメディアは韓国批判ばかりで、関係改善を求める意見は出にくい状況にあります。
私は誰に批判されようとも外交に携わってきた者として、日本の国益のために本当のことを言わなければならないと考えています。メディアも、原点に戻ってオピニオンリーダーとしての役割を果たしてほしいと思う。