しかし空港に停車しているバスのボディに書かれた大きな文字が気になった。

「深セン(※センは土編に川)援疆」

 香港との国境にある深セン。その街から新疆ウイグル自治区を援助するために贈られたバスなのだ。

 不快感が募った。

 2009年に起きたウイグル騒乱を思い出した。騒乱のきっかけは、深センがある広東省だった。工場の出稼ぎ労働者だったウイグル人を漢民族が襲った。しかし、加害側の刑事処分が曖昧にされ。そのことに不満を抱いたウイグル人たちが、新疆ウイグル自治区でデモを起こした。中心都市であるウルムチのデモは大規模で、公安と激しく衝突した。ウイグル人サイドは、この騒乱の死者は3000人以上と発表している。中国政府は新華社通信を通じて死者192人としているが。

 この騒乱をきっかけに、政府の新疆ウイグル自治区にいるウイグル人への締めつけはより厳しいものになっていく。

 新疆ウイグル自治区内でのウイグル人と漢民族との軋轢は根深い。支配、被支配の関係にも映る。ウイグル人は貧しく、その不満も政府に向けられる。いまでもなにかのきっかけで騒乱が起きかねない状況である。

 その街に深センから贈られた空港バスが走る。表面上は援助なのだが、その背後には、漢民族の優越の意識が横たわっている。金で問題を解決しようとする中国式発想。それをウイグル人たちは黙って受け入れるのだろうか。

 便利になったカシュガル空港。空港バスを拒むべきか、乗ってしまうか。バックパッカーあがりの僕には、空港での悩みが増えてしまった。

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