■ソフトバンク:80点


1位 甲斐野央(東洋大・投手)
2位 杉山一樹(三菱重工広島・投手)
3位 野村大樹(早稲田実・内野手)
4位 板東湧梧(JR東日本・投手)
5位 水谷瞬(石見智翠館・外野手)
6位 泉圭輔(金沢星稜大・投手)
7位 奥村政稔(三菱日立パワーシステムズ・投手)
育成1位 渡邉陸(神村学園・捕手)
育成2位 岡本直也(東農大北海道オホーツク・投手)
育成3位 重田倫明(国士舘大・投手)
育成4位 中村宜聖(西日本短大付・外野手)

 抽選を二度外したものの、その後の指名でうまくリカバリーした印象。1位の甲斐野はここまで残っていたのが不思議なくらいの投手で、リリーフ陣に故障者が続出しているチーム事情にもぴったり当てはまる。2位の杉山は即戦力ではないが、スケールの大きさでは今年の指名選手の中でも屈指の大型右腕。この二人を指名できただけでも高得点をつけられるが、さらに即戦力候補の板東の指名にも成功した。内川聖一、松田宣浩の後釜として右の強打者タイプの高校生を二人指名できたことも大きい。トータルで見ても十分に成功チームに分類できるだろう。

楽天:65点
1位 辰己涼介(立命館大・外野手)
2位 太田光(大阪商業大・捕手)
3位 引地秀一郎(倉敷商・投手)
4位 弓削隼人(SUBARU・投手)
5位 佐藤智輝(山形中央・投手)
6位 渡辺佳明(明治大・内野手)
7位 小郷裕哉(立正大・外野手)
8位 鈴木翔天(富士大・投手)
育成1位 清宮虎多朗(八千代松陰・投手)
育成2位 則本佳樹(山岸ロジスターズ・投手)

 1位で藤原を外しても同じ外野手の辰己に向かい、抽選で引き当てた。田中和基、オコエ瑠偉とこの辰己が外野のレギュラーを占めれば、チームの大きな売りになるだろう。気になったのは2位以降の指名。力のある投手を無視してまで捕手を2位で指名する必要性はあまり感じられず、3位から5位の三人の投手も未完の大器タイプが揃った。6位以降で大学生の実力者を三人並べたが、辰己に加えて、さらに同じタイプの大学生外野手である小郷を指名したところにも疑問が残る。全体的に狙いが分かりづらい指名に終わった印象だ。

オリックス:55点
1位 太田椋(天理・内野手)
2位 頓宮裕真(亜細亜大・捕手)
3位 荒西祐大(Honda本・投手)
4位 富山凌雅(トヨタ自動車・投手)
5位 宜保翔(未来沖縄・内野手)
6位 左澤優(JX-ENEOS・投手)
7位 中川圭太(東洋大・内野手)
育成1位 漆原大晟(新潟医療福祉大・投手)

 小園を外してもショートにこだわって、太田を指名。さらに5位でも高校生ショートの宜保を指名したが、昨年も福田周平、山足達也、廣澤伸哉を獲得していることを考えると、そこまでこだわる理由がもう一つ理解できなかった。社会人の投手三人はそれぞれ特徴があるが、先発の柱になるようなタイプのようには見えず、手薄な先発ローテーションの手当ができたようには思えない。頓宮、中川とチームに少ない右の強打者タイプを二人指名したことは理解できるが、全体的には消化不良な感が否めない指名だった。

 以前は大物から逃げる傾向が強かったロッテが果敢に抽選に挑み、安田、藤原と2年連続で大物高校生野手を獲得したことが一番印象深い。また高校生の好素材と大学生・社会人の実力派投手をうまく組み合わせた日本ハム、上位で大物を確保しながら下位では地方の大学という路線を貫いた西武。この2球団も過去の成功法則をうまく踏襲しているように見えた。一方の楽天、オリックスの2球団は安易に即戦力投手に向かわなかった点は評価できるものの、補強ポイントとマッチしているように見えなかった点と、各選手の指名順位に疑問が残った点が影響して低い評価となった。

●プロフィール
西尾典文
1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。

著者プロフィールを見る
西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

西尾典文の記事一覧はこちら