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今年の8月2日、アップルは、アメリカで初めて時価総額1兆ドル突破という偉業を達成した。
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現在も躍進を続けるアップルだが、それ以前の歴史を知る人にとっては、驚くべき事態かもしれない。今から20年あまり前、創業者スティーブ・ジョブズが不在だったアップルは、業績の悪化を止めることができず、身売りか倒産かと言われるところまで追い込まれていたからだ。
その後、復帰したジョブズによって、アップルはふたたび急成長を遂げた。2007年に時価総額1000億ドルを突破、2011年にはエクソンモービルを抜いて時価総額ランキング1位となり、以後トップを走り続けている。
アップルはどこで間違い、そして、いかにして復活したのか。『スティーブ・ジョブズ 世界を興奮させる組織のつくり方』の著者で、ジョブズとアップルに詳しい桑原晃弥氏に話を聞いた。
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企業がいつまでもイノベーティブであり続けるというのはとても難しいことです。かつてはイノベーティブだった企業も規模が大きくなるにつれてイノベーションを生み出せなくなり、やがては「あの会社も昔はすごかったのにね」と言われる存在になることがよくあります。
企業としてダメになったわけでありません。かつてに比べてより巨大にはなっているのですが、それ故に輝きを失うことがよくあるということです。スティーブ・ジョブズはその原因を「価値観の変化」にあると考えていました。
価値観が変化すると、企業文化が変わり、製品のつくり方や社員の採用の仕方、評価のあり方などもすべて変わってしまいます。
そのことを端的に示しているのが、ジョブズが去った後のアップルです。1985年にジョブズが去った後、アップルはジョン・スカリーの下で躍進の時代を迎えます。スカリーがCEOとなって約10年が過ぎた頃、売上げは80億ドル近くまで伸び、マッキントッシュの設置台数は1200万台を突破、アップルはパソコンの販売台数で世界一となり、業界で最高の利益を上げるまでになっています。