まず、日本側は、当初から関税だけに対象を絞って、交渉がFTAのような広範に及ぶものに拡大することを避けようとしたはずだ。しかし、どう頑張ってみたところで、トランプ大統領の一の子分である安倍総理をトップにいただく日本政府に勝ち目はなかった。結局、事実上のFTA交渉に入ることを避けられなかった。

 ここで、日本側は、譲歩する際に、共同声明に「自由貿易協定(FTA)」という言葉を書くことだけは避けるという条件を出した。米側は、実質がFTAであれば、名称にこだわる必要はないという合理的判断で、これを認めた。その結果、声明文からFTAという言葉は消え去った。もし、ここでFTAという言葉が入っていれば、TAG捏造という猿芝居の出番はなかったはずだ。

 さらに、日本側は、英文に細工を施すことを米側に要求した。後に日本語訳でTAGという言葉を捏造しやすいように、「a United States–Japan Trade Agreement on goods and other key areas including services」と書けば単純でわかりやすいのに、これを「a United States–Japan Trade Agreement on goods, as well as on other key areas including services,」と書き換えることを要求した。意味として違いは出ないので、おかしな英語だなとは思いつつ、米側は日本への「思いやり」でこれを認めた。出来上がったこの項目の英文はこうなっている。

「3.  The United States and Japan will enter into negotiations, following the completion of necessary domestic procedures, for a United States–Japan Trade Agreement on goods, as well as on other key areas including services, that can produce early achievements.」

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