これから展開される攻撃に対する小役人的反論はいろいろと想像できるが、今回は長くなり過ぎるので、次の機会に書くことにしたい。

 ペンス副大統領が、日米でFTA交渉を始めるという発言をしたという報道でもわかるとおり、米側は日本とFTA交渉を始めるつもりだ。しかし、日本はそれを否定し、「TAG」という捏造用語で「FTA」交渉入りを大々的に否定している。

 本来なら、日本政府に、共同声明(もちろん英語版)と矛盾することは言わないでくれと抗議してきてもよさそうなものだが、そういう気配はない。どうして、そんなに米側は寛容なのだろうか。

■米政府が猿芝居に付き合う理由

 その最大の理由は安倍総理とトランプ大統領の関係にある。

 そう言うと、二人は仲良しだから、その友情関係で大目に見てくれているのかと思う人もいるかもしれないが、そうではない。私は両者の関係は、「安倍・トランプ選挙互助会」だと見ている。

 トランプ大統領は、11月の中間選挙を控え、安倍総理は来夏の参議院選を控えている。そこで、二人の間には、相互に選挙応援をしようという大枠の合意があるということだ。

 今回の合意では、米側は、これまで日本が頑なに拒んでいたFTA交渉入りを認めさせた。共同声明にFTAという言葉はないが、内容は実質的にFTAだ。安倍総理は、農業の関税はTPP水準が限度だということを米側が尊重すると書かせたと自慢しているが、実は、これは米側に大幅に譲歩したも同然だ。なぜなら、交渉前から、TPP水準までは下げると先に約束したことになるからだ。これはアメリカの農家からは大きな成果だと受け止められている。さらに、自動車についても、日本から、米国内の生産と雇用を増やすようにするという事実上の約束を取り付けているが、これは自動車関連の労働者から見れば、大きな成果だ。しかも、こちらには、水準は書いてないので、青天井で要求できる。気に入らなければ、じゃあ、農業関税をTPP以上に下げろとか、だったら交渉は不調で自動車関税を上げるという道も残る。米側がかなり優位に立つ内容だ。

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トランプ大統領にとって、安倍総理は唯一のサポーター