9月26日に行われた日米首脳会談後に発表された日米共同声明。日本政府が発表した日本語訳に書かれた「物品貿易協定」(TAG)が捏造だったことは、先週(10月8日)の本コラムで、詳しく紹介した。特に、共同声明の正式版が英語のみだという指摘はそれまで行われていなかったため、非常に大きな反響があった。
当初、これに気づかず、正式な合意でも何でもない日本政府発表の和訳を「日米共同声明」と誤認して「TAG」を大々的に報じた大手マスコミにとっては、大困惑だったのであろう。あれほどの大誤報を流しておきながら、自らの誤報を今も認めることができず、非常に中途半端な報道を続けている。
しかし、ここへ来て、野党幹部らが、このスキャンダルを国民を欺く深刻な問題として取り上げ始めた。森友学園問題での財務省の文書改ざんとは性格は違うが、見方によっては、より悪質な捏造だとも言える。今月下旬に始まる臨時国会でも与野党の間で、激しい論戦になることは必至。担当の茂木敏充経済財政相の辞任要求が出ても全く驚くことはないくらいの大問題だ。
■3分でわかるTAG捏造解説
今回のTAG捏造問題のポイントを箇条書きにすれば以下の通りだ。
1.日本の農業関係者は、日米で自由貿易協定(FTA)交渉を始めると、関税などで大幅な譲歩を強いられると信じているため、FTAには絶対反対の立場である(FTAアレルギー)。このため、安倍総理も繰り返し、日米間でFTA交渉を行うことはないと口約束していた(FTAのタブー化)。
2.しかし、今回の日米間の交渉で、米側の圧力に負けた日本は事実上のFTA交渉入りをのんでしまった。
3.これでは来年の参議院選に大きな悪影響を与えると考えた安倍政権は、日本国内向けに、これまで誰も聞いたこともない「物品貿易協定(TAG)」という言葉を作り、FTAではなくTAG交渉に入ると発表した。
4.しかし、日米共同声明の英文には、この言葉はなく、むしろ実質的にはFTA交渉に入るという内容が書かれているため、日本政府が発表した日本語文との「食い違い」が問題となった。また政府発表の日本語文と米国大使館発表の日本語文も全く違っていることも問題となった。