ソフトバンク・工藤監督(左)とロッテ・井口監督 (c)朝日新聞社
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 西武の10年ぶりの優勝が秒読みとなった今年のパ・リーグ。夏場までは日本ハム、終盤はソフトバンクが食らいついたものの、結局一度も西武が首位を譲ることなくゴールテープを切ることとなった。シーズン前は混戦が予想されていただけにこの結末は意外だが、優勝を逃した5球団には何が足りなかったのか。今年の戦い方、成績を振り返りながら検証してみたい。

 まずは最下位に沈んだ楽天。昨年はスタートダッシュに成功して4年ぶりのAクラス入りを果たしただけに一気に優勝も狙えるとの声も聞かれたが、今年は一転して序盤から連敗を繰り返し、早々に優勝戦線から脱落した。最大の誤算だったのは抑えの松井裕樹。開幕から登板した10試合中6試合で失点を許して中継ぎに配置転換となり、それでも調子は上がらず6月7日から1カ月間は二軍調整を余儀なくされた。先発投手陣も安定していたのは岸孝之だけ。エースの則本昂大は防御率4点台で、実績のある美馬学、塩見貴洋、辛島航も揃って大きく負け越している。打線も昨年猛威を振るった外国人選手が不振で、8月にはアマダ-が禁止薬物の使用で長期出場停止となるなど、中軸を最後まで固定することができなかった。しかし、明るい材料も決して少なくはない。2年目の田中和基が1番に定着して18本塁打を放つなどブレイクし、内田靖人も打率は低いもののチームの高校卒選手としては史上初となる二桁本塁打をマークした。ルーキーの岩見雅紀も二軍ではチームトップの14本塁打を放っている。彼らが完全に一本立ちすることができれば、長年外国人選手頼みだった打線は大きく改善するだろう。

 ダントツの最下位だった昨年に比べると巻き返しを見せたロッテだが、夏場以降は完全に息切れして2年ぶりのAクラス復帰とはならなかった。大きな課題はやはり長打の少なさによる得点力不足。井上晴哉がチームでは5年ぶりとなる日本人選手の20本塁打をクリアしたが、続く数字は角中勝也とドミンゲスの7本。チーム本塁打67本は12球団でもダントツの最下位である。また規定打席をクリアして打率3割を記録した選手も0だった。中軸として期待して獲得した外国人選手が二年続けてほとんど戦力になっていないのも大きな問題点である。一方の投手陣は新外国人のボルシンガーが11連勝をマークして救世主的な存在となり、昨年は大不振に陥った石川歩も9勝をマークするなど復活して二枚看板は安定していたが、3番手以降の弱さが目立った。チームの成績が大きく下降したのも、石川が離脱した8月からである。リリーフ陣も益田直也、松永昂大から内竜也に繋ぐというパターンはあるものの、全員が防御率3点台と安定感を欠いた。ただ、そんな中でも日本人選手6人が規定打席をクリアし、内野の4人はしっかり固定して戦うことができたのは明るい材料である。またドラフト1位ルーキーの安田尚憲が二軍で中軸として機能していることも大きい。まだまだ一軍では成績を残せていないが、岩下大輝、種市篤暉など高校卒の本格派投手も開花しつつあるのもプラス材料だ。

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