野上:すごい皮肉だなぁと思って。画伯って声も聞こえたんですけど……。いずれにしろ「村本さんが」というのは誤報ですから、記者としては一番恥ずかしい。
――野上さんの舞台をご覧になってどう感じましたか?
村本:野上さんの人柄、性格がよく出て面白かったです。配偶者の方にも最後舞台に上がってきていただいて、そこでやり取りがあったんですけど、野上さんって「真面目、堅物人間」。
野上:考えすぎちゃうんですよね。
村本:考えすぎていて。でもそれで僕はいいと思うんですよ。「がんで記者」という話をするのではなく、「堅物記者・野上が喋る」。そんな感じでしたね。コメディアンに化けるでもなく、僕が一番期待していた通りでしたね。素で喋ってほしい。ひねくれ者なんだなって、それが面白いし素敵ですよね。
野上:ほんとね、鋭いですね。
村本:野上さん、分かりやすいですよ、ハハハ。あれってチケット代が4000円なんです。普通のライブで3000円くらい。4000円で素人のスタンダップ・コメディーじゃないですか。それが即完したんですね。お客さんも聞く価値のある話を分かっていて、最後は「すごい話を聞いた」と。「可哀相と思ってください」でもなく、「面白いでしょう!」でもなく、ただ淡々とその人の語り口調でその人の話を皆が2時間半、飽きることなく聞いている。小さなパイプ椅子にずっと座って。腰も痛いでしょうに。お客さんが話を聞いて笑っている姿を見て、「やってよかったな」と思いましたね。
野上:舞台の雰囲気が温かかったですね。僕は他の人の話も本当に聞けてよかった。入場料の4千円は新聞1カ月分ですよ、だけど、どっちに価値があるだろうって本当に考えちゃいました。
村本:そんな。でも、一つひとつを記事にしてもらいたいと思う話ばかりでした。
――そもそも、村本さんがマイノリティに着目したきっかけは何ですか。
村本:マイノリティというのは頭に「その場においての」という言葉がつくんです。たとえば、僕は独り身で彼女もいません。でね、旅行する時に予約人数を入れようとすると、「2人」から始まるんですよ。一回「1人」に戻さないといけない。ちょっとした段差があるんです。これ「独身マイノリティ」です。皆、その場において色んな段差があると思うんです。