――野上さんが最初AbemaTVで村本さんとご対面されてどんな印象でしたか。
野上:テレビに出てちゃんと喋るのは初めてで緊張もしたんですけど、「芸人はコンプレックスをネタにして活かしていくんだ」という話をされた時に、「確かに自分も今そういう感覚に近いのかな」とうまくスコンと言ってくれたような気がして嬉しかった。「そうですね」って言ったらニヤッと笑われたので、一方的にですけど、「こっちの話が通じたな、いいなぁ」と思いました。
――その後もやり取りはあったんですか?
野上:僕が入院した4月に連絡をいただきました。
村本:AbemaTVのスタッフが「野上さんが死にそうになった」「野上さんが」とよく言うんです。で、ずっと野上さんが頭にあって、記事なんかもたまに拝見したり。野上さんの文章って、怒っているように見えたんですよね。それで僕が舞台でやっている「スタンダップ・コメディー」に出てもらおうと思ったんです。
――スタンダップ・コメディーとは?
村本:アメリカなどのスタンダップ・コメディーというのは「黒人のコメディアンが白人社会に対して怒っている」「女性のコメディアンが男性社会に怒っている」「白人のコメディアンも政治に対して怒っている」などとマイノリティらが権利を主張して、怒りのやり場にコメディーが用いられます。分からないこと、答えのないものに対する怒りのやり場にコメディーを使っているんです。だから、笑わせているようで怒っているように僕は思うんですね。野上さんの記事も怒っているように見えた。それでマイクの前に向けてみたらどうだろうか、と。僕が見てみたいコメディーになるかなと。
野上:鋭いですね。たぶん怒っていました。あまり他人から指摘されたことがなかったんですが、さすがよくご覧になっている。村本さんがフジテレビ「THE MANZAI」でネタをやった時に「すごいな」って思ったのは、中身の社会風刺ネタがすごく斬新だからという注目ももちろんありました。だけど、このネタをやるまでに「ネタとして笑える」という完成度を高めたり、こういうことを扱う時間を持てるようになるまでに結構我慢もされただろうし、努力もされただろうし、色んなことをされてきたんだろうなと思ったんです。コラムの連載をさせてもらっていると、たとえば「がん患者だからこういうことを書いてほしい」という期待を感じることがあるんです。