しかし、翁長(雄志)前沖縄県知事が亡くなった時、(人が死に直面したときに)やりたいことって自分が元々やってきたことだったんだなと。彼だったら沖縄の基地問題だった。僕は政治記者だから政治のことを書きたいのですが、「周りの期待が違う」と鬱々しているところがあった。そんな時、村本さんは自分がやりたいことを枠の中できちんと収めてやってみせたところに、平たく言うと、感動したのかな。
村本:怒っているから書くんですよね。歌う人も絵を描く人もそうです。それがピュアで人の心を動かすんだと思います。野上さんは「がん」で「朝日」です。がんの友だちがいたら気になって読むし、朝日の記事が好きならもちろん読むでしょう。もしかすると、「アンチ朝日」の人も読むかもしれない。でも、「無理やり書かされている」とか変なことを言う人もいるんじゃないですか。
野上:言われますよ。「安倍政権批判のためにこの記者の病気を利用している」とか。
村本:あれ、めちゃくちゃ腹が立ちませんか。
野上:もう、笑っちゃうから、正直言ってそんなに腹は立たないです。ただ、「大丈夫かなこの人は」とは思いますよね。僕より気の毒なんじゃないかな、と。
――野上さんは7月19日にスタンダップ・コメディーに出演されました。マイノリティ的な境遇の素人9人がステージに立ち、野上さんはご自分のことをスケッチブックで説明されたりしていました。楽しかったですか?
野上:もちろん楽しかったです。あのスケッチブックは裏側に「あんちょこ」を貼るために作ろうと思っただけなんで、ものすごく雑な作りでした。前の日にあんちょこを置ける会場だって分かったんで、ほとんど持って行く意味はなくなったけど。スケッチブックを描いたのは配偶者なんです。
村本:前日に来て確認しましたよね。本番の日、そのスケッチブックを見て僕が「へたくそ!」って言ったんです。舞台にいた野上さんには「画伯!」って聞こえたみたいで、AERA dot.のコラムに「画伯!って呼ばれた」って書いてありましたね。「へたくそ!」って言ったんですけど……。