「私たち、結婚しました!」――続けて届いた2通の結婚報告はがき。お葬式に参列することのほうが増えていたというのに、まさか同年代である50代の友人から結婚話を聞かされるとは。もしかして、と調べたところ、ここ20数年で50歳前後の結婚増加が判明。総数から見れば少ないものの、“50歳からの結婚”が増えていることは間違いないようだ。連載「50歳から結婚してみませんか?」では、結婚という大きな決断を50歳で下すことになった5人の女性の本音とリアルに迫る。第12回は、番外編。ネット婚活で結婚に至った男性、下田敏春さん(仮名・54歳・会社員)の後編をお送りする。
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18歳のときに家を出てから、両親とのわだかまりを抱えていた下田さんだったが、親の介護、同居をきっかけに、確執は消え、穏やかな日々が流れていた。
「父はこっちに引っ越す前にがんが見つかり、どんどん弱っていました。でも、『お母さんが死ぬまでは俺は死なない』って言って」
そして、下田さんが両親を茨城県つくば市に呼び寄せて、2カ月後、お母さんが亡くなり、お父さんは言葉通り、後を追うようにその3カ月後に亡くなった。
下田さん、弟、妹、そしてお父さんだけで自宅でお母さんを弔った。心のこもった家族葬だった。そして、四十九日は関西で親族を集めて盛大に行った。お父さんは病気を押して参列。しっかりとした姿勢で席につき、親戚に挨拶もし、立派に務めた。
「おやじはおふくろのためにやりきったんだと思います。そしてある意味、自分の“生前葬”をしたんじゃないかと」
通院中も人が変わったように“愛されキャラ”になったというお父さん。病院へ行っても、看護婦さんから「お父さん、おもしろい方ですね~」と言われるほど。人が変わったのか、それとももともとそういう人だったのか。いずれにしても、下田さんは父親の知らなかった一面を知る機会も得た。
10代の頃から、親に反発ばかりしてきた下田さん。でもそれは、親に自分を認めてもらいたかったから。