下田さんは、初めて奥さんに会いに行った日、福岡に住んでいる先輩のもとを先に訪ねた。これから女性に結婚を前提につき合ってほしい、と告白するが、果たしてこんな自分でいいのか、と躊躇っていたからだ。そして、その先輩は下田さんにこう言ったという。
「今まで自分の好きなことだけをやってきて、何とか住む家もあって、生きているんだから、いいんじゃないか」と。
この言葉が背中を押してくれて、彼女に気持ちを伝えることができたという。
「母の人生、昔気質の父と一緒にいるのはつらいことばかりだろうと思っていました。愛情表現が下手な父の母への気持ちもわかりませんでしたから。でも、彼らの最期を看取って、夫婦愛っていいなと。私もお互いどこかで『必要とされている』、そんな両親みたいな夫婦になりたいな、と思います」
(取材・文/時政美由紀)
時政美由紀(ときまさみゆき)
(株)マッチボックス代表。出版社勤務後、フリー編集者に。暮らし、食、健康などの実用書の企画、編集を多数手がけている