パワハラだらけのスポーツ界 巣くう「金儲け主義」の悪弊

週刊朝日
 スポーツ界における暴力の連鎖が止まらない。

 日本体育大学は9月12日、暴力や暴言などパワーハラスメント行為があったとして、陸上部駅伝ブロックの渡辺正昭監督(55)を解任したと発表した。

 ランナーの大事な足を蹴り、胸ぐらをつかむなどの暴力行為をくり返した。故障者を「障害者」と呼び、練習についていけない学生を伴走車から「ひき殺すぞ!」と怒鳴る暴言もあったと指摘する報道もある。

 女子レスリング、日大アメフト部、女子体操……。相次ぐスポーツ界の指導者のパワハラや暴力行為は、なぜ断ち切れないのか。

 スポーツジャーナリストの谷口源太郎氏が怒る。

「軍隊式の統制を、スポーツ界は戦後も応用してきたのです。指導者は絶対的な権力者であり、特に大学では上意下達のシステムが徹底されてきたのです。それが成果をあげる早道ということで、過酷な練習にも恐怖支配で選手を従わせる。競技は勝たなければ意味がないという勝利至上主義が根底にあって、選手たちの人間としての尊厳などを踏みにじってきたのです」

 駅伝監督を解任された渡辺氏は、1993年から指導していた愛知・豊川工業高校の監督時代も体罰問題で懲戒処分を受け、退職した。しかし、同校を駅伝の強豪校にした手腕からか、一部の選手は引き続き指導を請い、保護者らは“嘆願”の署名活動まで展開していた。

『ブラック部活動』などの著書がある内田良・名古屋大学准教授が指摘する。

「体罰を支持するかのような事態でした。生徒や保護者が擁護すれば、罪の意識はなくなる。渡辺氏はますます自分が正しいことをしたと思い込んだのでしょう。たとえ全国大会で好成績をあげても、部活動は教育の一環ですから、暴力は絶対に容認しない強い姿勢が必要です。日体大は問題ある人物を迎え入れ、むしろキャリアアップさせた。そのため、また暴力が起きるという負の連鎖です」

 渡辺氏だけでなく、日体大の責任も厳しく問われるべきだろう。

「教育なんて二の次で、オリンピックをはじめ各種競技大会で勝ち、学校を宣伝してくれればそれでいいのです。学校のイメージが上がれば、学生も集まってくる。選手は金儲けのための商品なのです」(谷口氏)

 社会からのブーイングの声を受け止め、ノーモア・パワハラを遂げられるか。改善の道は険しいが、スポーツ指導のあり方を根底から見直す必要がある。(本誌・亀井洋志)

※週刊朝日  2018年9月28日号

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