写真:asken提供
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 代謝のメカニズムを知れば、ダイエットの効果をよりアップできる。夕方に運動して、正しい夕食を取り、寝る。さあ、きょうから始めよう。AERA 2021年8月30日号の記事を紹介。

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 夜に痩せる体をつくるには、やはり食事の内容やタイミングも大切だ。運動は夕方に終わらせて、効果を最大限に引き出す食事を取れば、寝ている間に脂肪を燃やしてくれるはずだ。
 それにはまず、ヒトの代謝のメカニズムから検証しよう。

 早稲田大学先進理工学部の金鉉基(キムヒョンギ)講師(39)は、運動が代謝に与える影響を研究している。脂肪燃焼の面からも、夕食前の運動が効果的だと説く。

 金さんらの研究グループは、20代の男性を対象に朝(午前9~10時)と夕方(午後5~6時)の時間帯にそれぞれ同程度の持久性運動をしてもらい、直後の血中濃度を比較する実験を行った。その結果、脂質分解を促進するホルモンの一種、アドレナリンやノルアドレナリンに加え、成長ホルモンが朝の運動よりも夕方で高値を示した。

 また、運動時の筋収縮によって筋細胞から分泌され、脂質代謝に関与するIL‐6(インターロイキン‐6)も夕方のほうが高値だった。いずれも、運動終了後の脂質分解が進んでいることを示すものだ。

「朝よりも夕方に運動した方が脂質分解をより促進し、肥満予防や改善にも寄与します。夕方に筋トレをすれば効果的に筋肉量を増やせることも、多くの先行研究で裏付けられています」

■深夜の運動はNG

 ただし、夜の遅い時間帯の運動はNGだ。目安は午後7時まで。これよりも遅くなると、体内時計のリズムが後退し、寝つきが悪くなったり、睡眠の質も悪くなったりするという。つまり、運動後に夕食を取って寝るのが理想的というわけだ。

 運動のタイミングは1日の血糖値の変動にも影響を及ぼす。金さんが現在進めている研究では、こんな結果が出ている。

 20代前半の男性を対象に、朝(午前9~11時)と夕方(午後4~6時)の時間帯に運動による血糖値の変動を比較した。その結果、朝に比べて夕方の運動後の方が血糖値の変動が穏やかで、血糖値の上昇も抑えられることがわかった。また、夕方の運動後は、血中の中性脂肪濃度の低下も見られた。

「夕方の運動が日中の血糖値コントロールや血中脂質の改善により有効で、糖尿病の予防や改善にもつながる可能性があります」(金さん)

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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