「心が動く」これこそエンタメ!(イラスト:サヲリブラウン)
「心が動く」これこそエンタメ!(イラスト:サヲリブラウン)

 作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニストとして活躍するジェーン・スーさんによるAERA連載「ジェーン・スーの先日、お目に掛かりまして」をお届けします。

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 エンターテインメントとは?と、ことあるごとに考えます。直近ですと、ネットフリックスのオリジナルドラマ「サンクチュアリ-聖域-」を観終わったときに思いました。話題沸騰ですよね。いやあ、面白かった!

 私は小さな頃から、ライブやお芝居など、舞台パフォーマンスのエンターテインメント全般が好きな子どもでした。新卒で就職した会社がレコード会社だったのも、そのせいだと思います。

 エンターテインメントという言葉は、所謂「板の上」で行うもの以外に、娯楽性の高いもの全般を指すこともあります。「エンタメ小説」や、「エンタメ映画」なんていう呼び方もありますね。アミューズメント施設もエンターテインメントを提供する場と考えて異論はないでしょう。人を楽しませるものは、総じてエンターテインメント。

 さて、この「人を楽しませる」について、もう少し考えを深めたいと思います。

 エンターテインメントが誰かを楽しませるものならば、「エンターテインメントとは?」の問いは、「受け手である自分は、そこからなにを享受しているのか?」という自身への問いにもなります。

「だから、それが楽しみってことなのでは?」と、簡単におっしゃるなかれ。「楽しみ」って言葉、ちょっと漠然としすぎてません? 楽しいと感じた自分を別の言葉で表現するとしたら、どうしますか?

 エンターテインメントから享受するもの、私はそれを「心の動き」と表現します。「心が動く」は感動の言い換えのように捉えられているきらいもありますが、ワクワクやドキドキなど、期待通り、もしくは想像を超えた体験をすると、心が動きます。これこそがエンターテインメントだと。

イラスト:サヲリブラウン
イラスト:サヲリブラウン

 私は日常生活においても「心が動くか?」だけを指針にして生きているところがあります。もう少し「安定」や「安心」に価値を置いてもよいのでは?と思わなくもないのですが、後悔したことはないので、これで良いと思っています。

 自分はなにを指針に生きているか、考えたことがありますか? そして、それが自分にとってなにを意味するのかを。これは「なんのために生きているのか?」と、同義でもあります。

 私は、心が動くために生きている。エンターテインメントについて考えるたび、私の答えはそこに至ります。

○じぇーん・すー◆1973年、東京生まれ。日本人。作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニスト。著書多数。『揉まれて、ゆるんで、癒されて 今夜もカネで解決だ』(朝日文庫)が発売中

AERA 2023年7月3日号

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ジェーン・スー

ジェーン・スー

(コラムニスト・ラジオパーソナリティ) 1973年東京生まれの日本人。 2021年に『生きるとか死ぬとか父親とか』が、テレビ東京系列で連続ドラマ化され話題に(主演:吉田羊・國村隼/脚本:井土紀州)。 2023年8月現在、毎日新聞やAERA、婦人公論などで数多くの連載を持つ。

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