過去には付きまといや宅配すしを送り付けられるなどの被害にあった議員もいるという。住所の公開が本当に必要なのか、議論が必要だ(photo 写真映像部・上田泰世)
過去には付きまといや宅配すしを送り付けられるなどの被害にあった議員もいるという。住所の公開が本当に必要なのか、議論が必要だ(photo 写真映像部・上田泰世)

 議会事務局のホームページ等で議員の住所を公開するのは、石巻市に限らず、全国各地で広く行われている。東京の場合、島しょ部の一部を除くすべての市区町村議会と都議会でホームページ上に何らかの連絡先住所を掲載している。

 ただし、公開される情報は一律ではない。最も多いのは、事務所・自宅問わず議員から届け出があった住所を掲載するというパターンで、東京都議会や23区議会のほとんどがこれに当てはまる。もっとも、「事務所がないためやむなく自宅を届け出ている」という議員もいた。また、市区町村によっては議員からの申し出により非公開とできたり、町名までの公開にとどめたりできるケースもある。個人の拠点ではなく政治団体の事務所や議会内の議員控室を掲載する例もあった。

 非公開などの対応は申し出があった場合に個別に検討する自治体が多いが、町田市では議員から個人情報を収集する際、「町名までの公開」を希望する旨のチェック欄を設けているという。36人の議員のうち17人が町名までの公開だ。東京都以外では、全員一律で町名までの公開としている自治体もある。

 一方、原則として自宅の住所を掲載している自治体も少なくない。都内では青梅市や狛江市などがこれに当たり、「公開したくないという要望を受けたことがなく、特に不都合がなかった」(狛江市議会事務局)と、慣例として続いているようだ。(編集部・川口穣)

AERA 2022年11月28日号より抜粋

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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