ソニーグループが営業利益1兆2023億円(2022年3月期決算)をたたき出した。営業利益1兆円超えは国内製造業ではトヨタ自動車に次ぐ2社目だ。家電の不振から復活した原動力は、そこで働く「ソニーな人たち」だ。短期集中連載の第1回は、人気ユニット「YOASOBI」を生み出した30代の2人。AERA 2022年11月21日号の記事を紹介する。(前後編の前編)
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音楽業界の“文化革命”だ。
3年弱にわたるコロナ禍。
人々の暮らしや働き方が激変する中で、社会現象といわれるほどの爆発的人気ユニットが誕生した。「YOASOBI」だ。
2019年12月にリリースされたYOASOBIの第1弾楽曲「夜に駆ける」は、わずか5カ月でストリーミングサービス再生回数が1千万回を超えた。20年と21年にはNHK紅白歌合戦に出場、21年12月には日本武道館でライブを開催した。現在、同楽曲の累計再生回数は、史上初の8億回を突破している。ソニー・ミュージックエンタテインメントによって、はじめて成し遂げられた快挙である。元気なソニーの象徴そのものといっていい。
ソニーグループ会長兼社長CEO(最高経営責任者)の吉田憲一郎は、YOASOBIが21年2月、初のオンラインワンマンライブを配信した際、「妻と一緒に、ワインを傾けながら楽しみました」と、担当者にメールを送って労をねぎらった。
■積極的な支援が文化
その担当者とは、ソニー・ミュージックエンタテインメントデジタルコンテンツ本部の屋代陽平(33)だ。YOASOBIの生みの親の一人である。
2012年に大学卒業後、入社し、3年間、iTunesやレコチョクといった音楽配信サイトに曲を売り込む仕事をした後、中長期の戦略を立てるための資料作成の裏方など、経営幹部のサポート業務に従事。そして、「新規事業創出」のミッションを与えられた。
読書好きだった屋代は、小説投稿サイト「monogatary.com(モノガタリードットコム)」を17年に立ち上げた。
小説投稿サイト自体は珍しくないが、いまなお、毎日200~300本が投稿されている。優秀作品を商品化するコンテストも開催されており、最終的な審査をするのは、屋代含む運営チームだ。