北朝鮮問題への関与

──権力基盤が安定することで中国がさらに膨張し、周辺地域との衝突が激化するとの懸念があります。日本でも防衛費増額の議論が盛んです。尖閣有事や台湾有事の可能性はありますか。

 日本の25倍の国土と膨大な資源を持ち、14億の人口を有する中国にとって経済的・物理的に新たな領土を得るメリットはないですし、国内に多数の少数民族問題を抱える国の統治拡大はリスクでしかありません。中国が尖閣を得ても魚以外魅力はなく、戦争をしてまで日本へ奪いにくる可能性はないでしょう。台湾有事も可能性は低いと考えます。中国の海軍力とそれを守る航空戦力で台湾海峡を越えて上陸するのは容易ではないこともありますが、何より習氏と台湾の人々の思惑が広い意味で一致しているからです。台湾独立は許さないが、一国二制度は許容するのが中国の立ち位置です。台湾世論も独立でも統一でもない現状維持派が今も多数を占めています。経済的なつながりや民間交流も盛んで、特に双方の若者にとって現状に不都合はないという声が多いのです。

──中国に期待することは?

 北朝鮮問題への関与です。北朝鮮が確実な核攻撃能力を持つと、米国の選択肢は先制攻撃か事実上の核保有容認かの二つになる。どちらも悪夢です。中国はかつての北朝鮮と日米韓中ロによる6者協議のような枠組みを主導して、北朝鮮を国際社会の中に近づけ、引き入れてほしい。それは日本・韓国にも世界にも、中国自身にも必要な道筋です。

(構成/編集部・川口穣)

AERA 2022年11月14日号