中国共産党大会で習近平総書記が2期10年までの慣例を破り、続投を決めた。今後どうなるか。元駐中国大使で元伊藤忠会長の丹羽宇一郎氏(83)に聞いた。AERA 2022年11月14日号の記事を紹介する。

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──5年に1度の中国共産党大会(10月16~22日)で習近平(シーチンピン)総書記(国家主席)の3期目の人事が固まりました。党序列2位の李克強(リーコーチアン)首相と4位の汪洋(ワンヤン)氏が「67歳以下は留任」の慣例を破って退任、習氏に近いとされる4人が新たに最高指導部の政治局常務委員に就きました。

■李強氏が党序列2位に

 全体を通しての印象は習氏の深慮遠謀といったところでしょうか。習氏は党主席制を復活させ、「人民領袖」の毛沢東に次ぐ実質2番目の永遠に残る大物名誉職に就くことを頭の中で描いていたはず。しかし、内外の現状を考えればとてもその時期ではありませんでした。「習近平1強」と言われますが、実態は必ずしもそうではありません。現状では一部先輩幹部の反発も当然です。新たに政治局常務委員に就いた者が成果を上げて認められ、さらに常務委員の大半から「習氏を党主席に」という声が上がってくる──。そんな誰にも反対できない状況になれば彼は喜んで党主席になることでしょう。今後4~5年でその動きが出てくるかもしれません。

──今回の人事で最も注目すべき点はどこでしょうか。

 上海市書記の李強(リーチアン)氏が政治局常務委員入り、それも党序列2位に「特進」したことです。李氏は4月に上海での新型コロナ感染急拡大を止められず、ロックダウンを余儀なくされました。それを乗り越えての抜擢(ばってき)はずば抜けた能力を示し、また、浙江省トップだった習氏の秘書長として厚い信頼を得たことの表れです。いずれ首相に就く見込みのようですが、海外とどんな関係を築くかも注視されています。

──新たな指導部に「後継」と衆目が一致する人物はいません。習氏の4期目、さらに終身国家主席もあり得るでしょうか。

 国のかじ取りでも企業経営でも、20年以上トップに立ってうまくいったケースはほとんどありません。ロシアのプーチン大統領がいい例です。習氏は2018年に国家主席2期10年の任期を撤廃し、「終身国家主席への道筋を作った」と言われましたが、世界の一流国になるために当面強いリーダーが必要だと考えるのは当然です。しかし、長期政権が国を滅ぼすことは自覚しているはず。生涯にわたって国を統治することは現状では絶対にありえないと思います。

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