コロナ禍で人影が消えたオフィス。一時期よりも出社する人が増えてきているが、フルリモートを志向する人は多い(写真:gettyimages)
コロナ禍で人影が消えたオフィス。一時期よりも出社する人が増えてきているが、フルリモートを志向する人は多い(写真:gettyimages)
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 コロナ禍で定着した在宅勤務という働き方から2年以上経ち、フルリモートを希望する人が増加している。完全フルリモートの職場に転職した場合、人間関係の構築や仕事の進捗共有はどうなるのか。AERA2022年5月16日号の記事を紹介する。

【アンケート調査結果】リモートワークを続けたい人が大多数

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 それまで出社で働いていた職場がリモートに変わるのとは異なり、最初からフルリモートを前提に転職するとなると、人間関係づくりやコミュニケーションに不安を覚える人も多いだろう。そこで先人たちにアドバイスを聞いた。

 東京、ベルリン、ミュンヘンに拠点を持つデザイン会社グッドパッチは18年からフルリモートの組織を立ち上げた。「Goodpatch Anywhere(グッドパッチ エニウェア)」という名前で、フリーランスを中心に様々な分野で活躍するデザイナーが国内外に360人強所属している。

 プロジェクトごとにデザイナーをチームとして束ね、クライアントとのやりとりもすべてフルリモート。プロジェクトの期間は3カ月程度から1年超と様々で、地方在住、子育て介護中の人といった「フルタイム×東京」ではない人材を集められる。働き手としても、東京にいなければ回ってこなかった大企業の仕事なども手がけられる。

 この組織でデザインマネジャーを務めるUXデザイナーの五ケ市壮央(ごかいちたけひさ)さんは、自身も子育てを機にUターンした札幌市で働いている。

 そんな彼が語るフルリモートの流儀は、まずは「リモートのせいにしないこと」だという。

「日々の仕事の中で様々な問題は起きますが、それはリアルな現場でも起きるもので、起きた問題がリモートのせいだったということは一つもありません」

 例えばプロジェクト初期の不安定な時期は、情報の流通量、コミュニケーション量を最大化することに気をつけるという。

 コミュニケーション量が減ると組織が不健全な状態に陥り、想像で批判したり、不確かな情報で物事を進めたり、守りのためにあれもこれも準備しようとして心も時間も消費してしまう。そうではなく、中身の議論に集中するため、懸念はその都度確認する。

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