メディア業界は長い間、男性が多数を占めるマッチョな職場でした。女性の権利や健康に関する企画を立てても、上司の理解を得られずなかなか実現しなかったのです。女性は全体の2割ほどしかいない上に、幹部は男性が独占しているような状態では、女性記者たちの声はかき消されがちです。しかし特に2017年の#MeToo以降、組織や媒体の壁を越えて女性たちが連帯して知恵を絞って企画を実現し、それまで軽んじられがちだった女性の権利や健康に関する報道を増やしてきました。私もそうした女性たちの情熱に触れて、とても励まされています。共感する男性記者たちも増えてきています。
女性差別のない世界を。女性が安心して生きていける社会を。ポジティブなアクションとは、格差の現実を直視して、実際に変化を起こすこと。毎年その思いを新たにしています。
小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。『仕事と子育てが大変すぎてリアルに泣いているママたちへ!』(日経BP社)が発売中
※AERA 2022年3月21日号