先生たちの熱意があった

  簡単そうに見えるかもしれませんが、この企画を実行するためには、影では先生方の努力が不可欠でした。コロナ禍で感染対策が求められます。たとえば、温泉体験では1人の生徒が入るたびに簡易プールのお湯を替えて消毒するなど、何とか実現しようと考えてくださった先生がたの熱意には本当に頭が下がります。

 肢体不自由児が通う特別支援学校は、基本的に接触を避けることができません。バギーの乗り降りを含め、移動する時には必ず抱きかかえなければならず、給食も介助が必要です。

 感染対策として一時期は休校の措置もありましたが、その時に学校から送られてきた、先生手作りの課題が詰まったDVDを見た長女の姿が印象的でした。

学校の刺激の大きさ感じた

 元々、長女は自宅にいる時にはDVDを見て過ごすことが多いのですが、一方的に音楽が流れている受け身の内容とは反応が全く違いました。

 普段なら好きな曲が終わると怒って声を出しますが、これから何が始まるかという先生の説明にじっと聞き入ったり、課題ができると得意気な顔でこちらを見たり、教材が映っている画面に必死に手を伸ばしてさわろうとしたり……。学校の刺激の大きさを改めて感じ、いつもこんなふうにかわいがってもらっているのだと思うと、うれしくなりました。

 たとえ、私が同じ教材を自宅で長女に見せたとしても、教室と同じような反応ではないと思います。まわりに先生や友達がいるからこそ、待つことができたり、人が集まると明るい雰囲気になったりすることを、彼女なりに感じ取っているのでしょうね。

 残念ながら1月の校外学習も中止となり、かわりに校内でボウリング大会が開かれました。数日かけてみんなで練習をして本番に挑んだようです。

【学校からの連絡帳より】
『ボーリング大会本番! 練習通りに右手を動かし、「3.2.1!!」の声かけに合わせ、ニッコニコでボールを押して転がしました。友達が投げている時もボールを目で追ったり、友達をじっと見たりして、しっかり応援していました。ゆうちゃんは4位!メダルをもらってフフフ…とニコリでした』

 子どもたちは日々成長し、大きくなっていきます。多くの制限がある中でも、学びを止めず、できる限りの活動を継続して下さっている先生がたには、日々感謝しかありません。つい最近の中学部だよりには、「土の中で力を蓄えている種子のように、芽吹く準備を積み重ねていきたいと思います」という先生からのメッセージが載っていました。

 来年度こそ、たくさんのイベントが予定通りに開催できることを願っています。

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江利川ちひろ

江利川ちひろ

江利川ちひろ(えりかわ・ちひろ)/1975年生まれ。NPO法人かるがもCPキッズ(脳性まひの子どもとパパママの会)代表理事、ソーシャルワーカー。双子の姉妹と年子の弟の母。長女は重症心身障害児、長男は軽度肢体不自由児。2011年、長男を米国ハワイ州のプリスクールへ入園させたことがきっかけでインクルーシブ教育と家族支援の重要性を知り、大学でソーシャルワーク(社会福祉学)を学ぶ。

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