都庁前の食料配布の最前列に座っていた30代の女性。自分の力で何とかしたいので、生活保護は受けたくないと話した(photo 編集部・野村昌二)
都庁前の食料配布の最前列に座っていた30代の女性。自分の力で何とかしたいので、生活保護は受けたくないと話した(photo 編集部・野村昌二)

 ホームレス支援の食料配給の現場で、多くの女性を見るようになった。コロナ禍で、女性たちにいったい何が起きているのか。AERA 2022年1月24日号では、政府の生活支援からこぼれ落ちている女性たちの現状を取材した。

【写真】東京・池袋の公園で、冬物のジャンパーをもらった50代の女性

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「生きるのに必死です」

 1月上旬、東京・新宿の都庁前。食料配布の最前列に座っていた30代女性は、つぶやいた。

 高校を卒業後、派遣の仕事を続けてきた。しかし昨年5月、新型コロナウイルスによる業績不振を理由に「雇い止め」にあった。姉と一緒に都内のアパートに住んでいるが、姉もコロナ禍で仕事をなくしたので頼れない。家賃と光熱費は、姉と折半し月4万円ほど。貯金はわずかしかない。少しでも節約するため毎週、配給の列に並ぶようになった。情報はSNSで知った。

 最近、ようやくスーパーでのパートが見つかったが上司のパワハラがひどく、近く辞めるつもりだ。だが、次の仕事の当てはない。このまま仕事がなかったらどうしよう──。不安ばかりが頭をよぎる。この日は、3時間近くかけ歩いてきたという。

「少しでも切り詰めないと、生きていけなくなります」(女性)

 コロナ禍で生活に困窮する人を取材してきて、ある変化に気がついた。公園などホームレス支援の食料配給の場で、多くの女性が並ぶ姿を見るようになったのだ。年代は幅広く、初めて列に並ぶという人も少なくない。

■支援からこぼれ落ちた

 電気代が払えない、食べる物がない……。幼い子どもを連れた母親を見かけたこともあった。コロナ禍の片隅で、女性たちに何が起きているのか。

 都庁前の食料配布は、NPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」と「新宿ごはんプラス」とが共同で毎週土曜日に開催している。もやい理事長の大西連(れん)さんは、コロナ禍以降、明らかに女性の数が増えたと話す。

「コロナ前は毎回100人ほど並び、その中で女性は数人でした。コロナ以降は、毎回350人近い中で女性は50人近くになりました。家族にも地域にも頼れる人がいないなど、国の支援からこぼれ落ちた人たちが多い。国は、困窮者の声を聞いてほしい」

 長い列の中に、女子大生(22)がいた。

「親に負担をかけられないので、こういう支援はうれしいです」

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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