「大学では40人ほどに投与しましたが、全員に効果があった。まさにブロックバスター(画期的な薬効を持つ新薬)です」

 ただし、現状いずれも薬価が高く、3割負担で「ゾレア」は月1万8千円、「デュピクセント」は月4万円ほどかかる※。

■ゴールをどこにおくか

 葉山医師は、助成を調べたうえで、「費用対効果」をどう捉えるか、「治る」をどう定義するかも大切だと話す。

「蕁麻疹もアトピー性皮膚炎も、症状から労働生産性が3割から4割、落ちると言われています」

 かゆみで集中力を欠き、夜間に眠れず昼間に職場で眠くなり、仕事がうまくいかなくなることもある。ひきこもりがちになるケースもある。

 また、慢性蕁麻疹の場合、薬も注射もなくまったく症状が出ない状態になることを「治った」と定義するなら、平均で5、6年かかる。長い人では二十数年、「治っていない」人もいるという。

「私はアレルギー性鼻炎があり薬を飲むことが日常で、『これでいいかな』と思っている。患者の『ゴール』はその人によって違う。薬や治療法との付き合い方も、その人の価値観によって決めるべきだと思います」

※自己注射で3カ月分まとめて処方を受け、高額療養費制度を使えば負担額は減る

(ライター・羽根田真智、編集部・小長光哲郎、井上有紀子)

AERA 2021年10月18日号より抜粋

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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