バレーボールやサッカーの日本代表、テニスの大坂なおみら五輪で注目される女子選手は多い。だが、報酬面などで深刻な男女格差がある (c)朝日新聞社
バレーボールやサッカーの日本代表、テニスの大坂なおみら五輪で注目される女子選手は多い。だが、報酬面などで深刻な男女格差がある (c)朝日新聞社
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AERA 2021年7月26日号より
AERA 2021年7月26日号より
AERA 2021年7月26日号より
AERA 2021年7月26日号より

 スポーツ界が抱えるジェンダー問題が深刻だ。女子選手の報道の扱われ方や性的マイノリティーの選手たちに対する偏見など、多くの問題を抱えている。「五輪」特集のAERA 2021年7月26日号から。

【図】リオ五輪期間中 スポーツニュースに取り上げられた選手の性別と国籍はこちら

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 報道にも偏りがある。愛知工科大学の小林直美准教授は過去3大会で五輪期間中に夜のニュース番組に登場した選手の国籍と性別を調査した。前回リオ五輪で日本の男子選手が49%、女子選手が40.3%で、外国選手は男女ともに5%前後だった。男女の差はあまりないように見える。だが、五輪期間外の地上波テレビでのスポーツ放送時間の調査(日本スポーツとジェンダー学会編『データでみるスポーツとジェンダー』)では、女子選手はわずか8.7%だった。小林さんはこう分析する。

「国内の五輪報道は日本選手のメダルがフォーカスされる傾向がある。五輪のメダル数は男子選手が5割強、女子選手が4割強なので、女子選手も多く取り上げられます。が、五輪以外では圧倒的な格差があります」

 描かれ方にも違いが見られるという。女子選手の場合、家族などプライベートの話題がよく取り上げられる。ニックネームでは男子選手は「王者」「エース」「史上最速」といった選手個人の実績や技量にちなんだものが多い。一方、女子選手は「ちゃん」付けや「〇〇娘」といった子ども扱いが目立った。ニュージーランドの研究者、トニー・ブルース氏の研究でも、報道量などで同様の傾向が指摘されている。

 スポーツとジェンダーを考える際に忘れてならないのは性的マイノリティーの選手たちだ。男女二つのカテゴリーに分かれるスポーツの世界では、長らく「見えない存在」とされてきた。だが、今回の東京五輪でトランスジェンダーを公表した選手が初めて出場する。重量挙げ女子87キロ超級のニュージーランド代表ローレル・ハバード(43)だ。男子の国内ジュニア記録保持者だったが、性別の違和感から20代で一度引退。30代で性別適合手術を受け、女子選手として競技復帰した。

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