自らもひきこもり経験のある精神科医が、ひきこもりに向けられる社会の視線や 問題の報じられ方を変えようと「引きこもり絵画大賞」を設立、作品を募集している。 AERA 2021年5月3日-5月10日合併号から。
【写真】ひきこもりの「黒歴史」が役に立つ 自己肯定感につながる「雑誌」
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応募資格は、ひきこもりまたは元ひきこもりの人。
一風変わった「引きこもり絵画大賞」は、ひきこもりに対する新たな見方を提示したいという主催者の思いから始まった。クラウドファンディングに支援者が集まり、開催が決定した。
主催するのは京都市の精神科医・東徹さん(41)。「引きこもり文学大賞」を2019年から実施してきた。
東さんは普段の診療のほか、役所の精神科関連の相談業務も担当することがあり、ひきこもり当事者や家族と接する機会が多くある。さらに自身も1年ほどひきこもったことがあり当事者体験を持つ。
■報じられ方に違和感
東さんは長年、ひきこもり問題の報じられ方について違和感を持っていたと言う。ひきこもりは悪いこと、なんとか社会に出なければいけない、出さなければいけない、という観念が非常に強いことへの違和感だ。
「当事者はよりプレッシャーを感じてストレスを抱え、自己肯定感を持てなくなり、結局、ひきこもりのまま苦しみ続けます」
当事者も周囲もひきこもりに対する価値観を変えられるアプローチはないか。その答えが文学大賞の開催だった。
「ひきこもりと言っても様々な人がいますが、内省的で考えすぎてしまう人が多いように感じます。これによって苦しんでしまう半面、この性質は文学に親和性が高く、有用な特性なのではないかと感じました。多くの文豪が執筆時に温泉宿にひきこもってきましたよね」
文章を作るのは苦手でも、絵を描くのは得意な人もいるはずで、そのような人にもスポットライトが当たる機会を作りたいと絵画大賞の創設を決めた。
■世間の視線を変える
今回の絵画大賞の課題となるのは、第1回引きこもり文学大賞の大賞受賞作品である山添博之さんの「つうじょうじん」に付ける表紙や挿絵の計3点。