「ルポものが好きで、犯罪絡みばかりになっちゃいました(笑)。誰かの思想を読むより、現実に起きた事象から感じ取るのが好きなんです」

『桶川ストーカー殺人事件─遺言』(新潮文庫)清水潔 
「被害者が訴え続けてもそれが届かなかったのは、被害者が若い女性だったから。マスコミによるセカンドレイプもあり殺害された後も加害者の思惑通りに名誉を傷つけられた。社会全体が『若い女性だから』という先入観で助けを求める声を聞かず、違和感を覚えなかった。それがこの事件の闇で怖いと思う」

『毒婦。 木嶋佳苗100日裁判傍聴記』(朝日新聞出版)北原みのり
「ミソジニーをうまく手なずけ、佳苗はジェンダーへの嗅覚が優れていて、ジェンダーが起こす心の隙間に入るのがうまい。老人の性がないことにされているのにも気づいていたし、自分の容姿を卑下せずボディーポジティブを体現していて、先を行っていた。読んでいくと私たち自身のあり方を問われる」

『月経と犯罪』(平凡社)田中ひかる
エッセーでPMSについて書く機会があり読んだ本。「放火は生理中の女の犯行だとか、毛深い女は犯罪者予備軍だとか、めちゃくちゃなことが昔の学者や権威ある人によって言われていた。その名残は今も確実にあって、全部の根幹がそこにある気がする」。同著者の『生理用品の社会史』もおすすめだそう。

『AV女優ちゃん』(扶桑社)峰なゆか
『アラサーちゃん』著者による自伝的漫画。商品として性が売られていく舞台裏が描かれる。「サイン会のくだりでは弱者がさらなる弱者を見つけてあざ笑う様子も描かれている。女性は性欲がないことにされる言説も多いけど、それが素直にさらりと描かれているのもいい。性産業へのリスペクトを感じます」

『本音の置き場所』[自著](講談社)バービー
初のエッセー集。章タイトルは「料理は好き。でも『男の胃袋』を掴んでたまるか」「バラエティといじりの関係性」「セックスには契約書が必要か」など。体のコンプレックスから仕事へのプライド、自分との向き合い方まで「文字だからこそ伝えられることがあると思います。同じことをテレビで話すのは難しい」。

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