■決めつけると自分も苦しい、読書でそれに気づける

高頭佐和子さん
たかとう・さわこ/書店員。青山ブックセンター、ときわ書房を経て、現在は丸善丸の内本店に勤務。2004年の立ち上げ時から、本屋大賞実行委員としても活動している

 本誌連載「書店員さんオススメの一冊」でもおなじみの高頭佐和子さん。丸善丸の内本店で2階売り場長を担当する。2階には文芸書コーナーがあり、女性エッセイの棚で、生き方、恋愛、暮らしなどをテーマにした本を扱っている。「売り場を訪れるお客さんの多くは、丸の内に勤務する向上心の高い女性たち。彼女たちがほっとできたり、楽しんだり、自分の生き方について考えたりする本を見つけられる場所になればと思っています」

 選んでもらった5冊も、フェミニズムのメッセージ性が強いというより、考えるきっかけをくれたり、パワーをくれたりするような本ばかりだ。

「女性だから、男性だからこうしなきゃ、何歳だからこうしなきゃ、と思ってしまうことって、自分に対しても他人に対してもありますよね。でも人のことを決めつけると、結局自分のことも苦しくしてしまう。そういうことに、本を読むと気がつくじゃないですか。だから本を読むことは自分にとって大切な行為なんです」

『彼女は頭が悪いから』(文藝春秋)姫野カオルコ 
東大生による強制わいせつ事件に着想を得た小説。「ノンフィクションでは書けないそれぞれの内面性が、小説だからこそ深く描かれている」と高頭さんは評価。「学歴が低いとか性別が違うとか、そういう根拠のないことで人を下に見る気持ちが自分に全くないと言えるのか。それを突きつけられる小説です」

『おまじない』(筑摩書房)西加奈子 
収録された8編のうちイチオシは「燃やす」。ボーイッシュな女の子がスカートをはいたことである事件に遭い、またスカートをはかなくなってしまう。「私自身も高校の時に痴漢に遭ったし、許せない、おかしいと思う感情は今でも残っている。心の中に残っていた痛みを燃やしてくれるような作品です」

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