フェミニズムにまつわる本を刊行するエトセトラブックス。代表の松尾亜紀子さんは前職の出版社時代から編集者としてこのテーマで本を作ってきた。「それまでやってきたことをよりじかに、広く届けるにはどうしたらいいかと考え独立。フェミニズムの本が求められているのは前の会社でも感じていたし、今も読者は増え続けています」

 今回選んだ5冊は、性暴力・性被害に関するもの。「ジェンダーつまり社会的な性差があることで何が問題かというと、そこに差別が生まれるからです。その最たるものが性暴力。根幹にある問題の一つと思っているので、このテーマで選びました」。松尾さんは性暴力の根絶を目指すフラワーデモの主催者でもある。デモのきっかけとなった4件の性犯罪の無罪判決のうち、3件は逆転有罪判決が出た。「声をあげる方法はデモに限りませんが、政治や司法はすごく世論を気にする。まずは社会の意識を変えないと何も変わらないし、少しずつ変わってきていると思います」

『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を。』(タバブックス) 小川たまか
「小川さんは性暴力にまつわる問題をここ数年メインに書いているライターさんです。当事者や関係者への取材や、裁判の傍聴を重ね、それを読み手に近いところから書いてくれる。性被害を取材・報道するときに留意するべきことも書かれているので、メディア関係者も読んでください」

『男社会がしんどい』(竹書房)田房永子
『母がしんどい』の著者によるコミックエッセー。「痴漢やコンビニのエロ本の話など、個人的な経験から考えることで社会的な考察をし、独自の視点と手法で描くのが田房さんのすごさ。『個人的なことは政治的なこと』というフェミニズムのスローガンを体現している。あらゆる性別の人に読んでほしい」

『痴漢とはなにか 被害と冤罪をめぐる社会学』(エトセトラブックス)牧野雅子
なぜ痴漢が「カルチャー」のように扱われ軽んじられてきたのか。被害の問題ではなく冤罪(えんざい)の問題であるかのように語られるのか。「様々な新聞・雑誌記事から痴漢を考察した社会学の研究書です。社会が被害を軽視し、対策にジェンダー視点が欠けていることがよくわかる」。学校からの注文も多い。

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