実験した豊橋技術科学大学機械工学系の飯田明由教授(流体力学)によると、それぞれの繊維をどう空気が流れるかによってマスクの効果が変わるという。不織布は細かい繊維が複雑に絡み合い、飛沫がマスクを通り抜ける際に繊維に引っ掛かりやすい。一方、スポンジの素材として使われることも多いウレタンは、複数の気泡がつながった構造をしているため、空気が通り抜けやすい。穴の大きさは不織布の繊維間の穴の10倍ぐらいあるという。

 布マスクの場合、布1枚は碁盤の目のように穴があいているが、通常、複数枚の布を重ねてマスクが作られているため、碁盤の目が少しずつずれており、そこに飛沫が引っ掛かる。

 ただし、素材だけでマスクの性能が決まるわけではない。

「マスクのつけ方や使い方によって、マスク本来の性能がどの程度発揮できるのか大きく異なる。顔面とマスクの隙間が大きくなればなるほど、発揮できる性能は低くなる」(飯田教授)

■人や環境に応じて選ぶ

 WHOのマスク指針も、素材にかかわらず、▽マスクが鼻と口を覆い、顔面の隙間を最小限にする▽会話をする際にはずさない▽はずす際には、マスクの表面を触らない、などといった13項目の注意点を挙げている。また、適切なマスクの着脱方法などを動画で公開している。

 飯田教授は、飛沫阻止率の高いマスクは空気が通りにくいため呼吸もしにくい点を考慮し、マスクを着用する人や環境に応じて、どのようなマスクをつけるかを選ぶのがいいと言う。

「散歩やランニングなど屋外で運動の最中は、人との接触が少ないなら息苦しさが少ないポリウレタンマスクでも構わない。成長期で多くの酸素が必要な子どもや喘息など呼吸障害のある人で、不織布マスクで息苦しさを感じるなら、ストレス無く呼吸のできる別素材のマスクをしっかりと着用した方がいい。素材の差よりもみんながマスクを着用することの方が重要だ」

(科学ジャーナリスト・大岩ゆり)

AERA 2021年2月8日号