別の関係者は「隣国だから支持するのが当然だという、韓国の世論は理解できない」とも語る。かつて韓国は国連安全保障理事会改革で、日本の常任理事国入りに反対し続けた。その一方で、潘基文(パンギムン)氏が国連事務総長選挙に立候補すると、日本に支持を働きかけたこともある。

 似た騒ぎは、トランプ米大統領が、今年の主要7カ国(G7)首脳会議に韓国を招待した際にも起きた。菅義偉官房長官は6月29日の記者会見で「G7の枠組みを維持することは極めて重要」と語り、G7拡大に反対する考えを示した。

 これに韓国側は猛反発した。韓国メディアによれば、大統領府高官は匿名を条件に「(日本の)恥知らずの水準は全世界で最上位圏」「隣国に害を与えることに慣れている日本」「国際社会、特に先進諸国は日本の水準を十分に認識している」など、日本をなで切りにした。

 ただ、日本政府関係者は「枠の拡大に反対するのは、単純に日韓関係が悪いからですよ」と語る。別の関係者も「文在寅(ムンジェイン)政権の対中国、対北朝鮮外交がG7の立場とかけ離れているからだ」と話す。

 日本の主張は極めて合理的だが、日韓関係が悪化して対話する機会が激減しているため、無用な誤解や政治的な曲解を招いているようだ。

 7月下旬には、韓国江原道平昌(カンウォンドピョンチャン)の韓国自生植物園で、安倍晋三首相を模した像が慰安婦像に土下座する形で展示される報道が流れた。菅官房長官も28日の記者会見で「そのようなことは国際儀礼上、許されない。仮に報道が事実であれば日韓関係に決定的な影響を与えることになる」と警告した。

 日韓の間で明るいニュースはしばらく望めそうもない。(朝日新聞編集委員・牧野愛博)

AERA 2020年8月10日-17日合併号