「うつらない」ための対策として重要なのはこまめな手洗い。マスクは気休め程度だ。そして何より、自分が感染しているという前提で「うつさない」対策を心がけたい(撮影/写真部・小黒冴夏)
「うつらない」ための対策として重要なのはこまめな手洗い。マスクは気休め程度だ。そして何より、自分が感染しているという前提で「うつさない」対策を心がけたい(撮影/写真部・小黒冴夏)

 急拡大する新型ウイルス。おびえているだけでは、事態は好転しない。正しい知識をもとに、できることは全部やろう。諦めたら、そこで試合終了だ。AERA2020年3月9日号では、「新型ウイルスの実像」を特集。専門家が対策法を解説する。

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 急激に感染が拡大する新型コロナウイルスに対して、私たちはどう振る舞えばいいのか。国際医療福祉大の和田耕治教授(公衆衛生)はこう話す。

「自分から他人にうつさないことを最優先に考えてほしい」

 今は誰が、いつ新型肺炎患者になってもおかしくない状況にある。このため心理的にはどうしても、まずは他人から「うつされない」ことを第一に考えがちだ。しかし、この意識を転換し、自分が感染している可能性を常に頭において、他人に「うつさない」ための措置を優先するべきだという。

「うつさない」ために、ビジネスパーソンが取るべき最も重要な行動は「発熱したら出勤しない」ことに尽きる。発熱を早期に自覚するには、日頃から体温測定など健康の自己管理を怠らないのが前提になる。

 感染の目安となる体温は37.5度だ。それ以上になれば出勤せず、外出も控えることを徹底しなければならない。国が示している帰国者・接触者相談センターに相談する目安は、37.5度以上の発熱が4日以上続く場合だ。

 医療機関などで「熱があります」と訴える人に、「何度ですか」と尋ねると、「体温計を持っていないのでわかりません」と答える人が少なくないという。新型肺炎の流行は今後も続くのは必至だ。体温計は早めに確保しておこう。

 和田教授が不安視するのは、感染拡大で医療体制がパンクしてしまうことだ。

「クルーズ船からの搬送患者を受け入れている関東地方の医療現場からは『医療が崩壊しつつある』という悲鳴も聞こえてきます」

 限られた人員でさまざまな病気や事故の急患に対応しているのに加え、新型肺炎の重症患者への対応が急増すれば、医療現場が対応しきれなくなってしまう状況にあるというのだ。

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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