稲垣えみ子「ガイドブックに『勝った』と思えた我が旅のスタイル」 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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稲垣えみ子「ガイドブックに『勝った』と思えた我が旅のスタイル」

連載「アフロ画報」

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稲垣えみ子AERA#稲垣えみ子
稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

台南の住処の屋根にはよくネコが遊びにきた。猫しゃあしゃあに抵抗して一枚!(写真:本人提供)

台南の住処の屋根にはよくネコが遊びにきた。猫しゃあしゃあに抵抗して一枚!(写真:本人提供)

 元朝日新聞記者でアフロヘア-がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

【写真】台南の住処の屋根にはよくネコが遊びにきた

*  *  *
 しつこく今回も台南の話。行く前には考えてもみなかったちょっと嬉しい事が起きたので、思わず書く。

 実は会社を辞めて、我が旅のスタイルは一変した。時間だけはたっぷりあるので、忙しく観光することを一切やめたのだ。

 じゃあ何をするのかというと、普段と同じことをする。民泊で家を借り、普段と同じ時間に起きて、ヨガをして、掃除洗濯をして、近所で買い物をして、料理をして、行きつけのカフェで原稿を書き……いやね、これが案外おおごとなのだ。初めての場所で言葉も通じぬとなれば、近所をうろつき感じの良い店やらカフェやらを勘を頼りに開拓するだけでもおばさんは必死である。そして気に入ったら再訪し、感じよく振る舞う。こうしてご近所に拠点と知り合いを一つ一つ増やしていくのである。

 昨年、フランスのリヨンで初めてこの方式を採用し、フランス人に翻弄されまくりながらもなんとかやり遂げ、今回が2度目の挑戦であった。前回の経験が生きた。そして台湾の方の優しさに助けられた。帰る頃にはなんと、近所で会うと笑顔で手を振ってくれる「知り合い」まで現れたのだ。

 で、帰国してからふと、本やネットや雑誌の台南特集をいくつか読んでみた。

 見るもの食べるもの買うもの、全て懇切丁寧に指南してあった。私にはどれも初耳であった。つまりは飛行機に4時間揺られて10日も滞在しながら、私はプロが推奨する見るべきもの、食べるべきもの、買うべきもの、どれも未経験のまま帰国したのである。

 だがそれを全く残念に思わない自分がいた。それどころか、私はどんなガイドより深く台南を知っていると思った。私は私の目で、心で、つまりはなけなしの全力で台湾にぶつかっていったからだと思う。そう、旅は紙や画面の上にあるんじゃない。自分の目や耳や皮膚や心の中にあるのである。

 痛快であった。「勝った」と思った。何に? よくわからんが、何か、巨大なものに

AERA 2019年8月5日号


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稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

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