しかし一番期待していたジャンプ指導については、消化不良の面もあった。新たな4回転の練習はできず、すでに試合で挑戦している「トリプルアクセル+4回転トウループ」などを練習した。結局、ロシアチームへの移籍は見送られ、帰国した。

 新たな視野を広げようと、8月中旬にはカナダ・トロントへ渡り、今季のプログラムに着手する。ショートは羽生結弦(24)の「SEIMEI」の振付師であるシェイリーン・ボーンに、フリーは羽生のエキシビションを振り付けているデヴィッド・ウィルソンと作る予定だ。すでにウィルソンとはコンセプトを話し合った。

「ジャンプのためのプログラムではなく、僕自身が作り上げるプログラムがいいと話しました。僕はこれまで振り付けに意見することはなかったけれど、自分らしさのある、自分が楽しいと思えるプログラムで試合に出てみたいんです。ここ数年はジャンプをメインにしたプログラムが続いていたのを自分でも実感していました。それは僕がジャンプを跳ばないと勝てない状態だったから。今季は(演技の点数が)重要視されていなくてもやってみたいんです」

 ウィルソンは、プログラム全体の流れを重視し、ジャンプを自然に溶け込ませる振付師だ。宇野が楽しく踊る姿を想像し、ハイテンションな曲二つを提案。そのうちの1曲を宇野自身が選んだ。

「今までは美穂子先生が振り付けたプログラムしか試合ではやってこなくて、試合らしい(クラシックな)曲調が多かった。今季のフリーは『エキシビ!?』みたいなプログラムになると思います」

 ショートも同様に、振付師が提案した曲から宇野が選んだ。

「選手に個性があるように、振付師さんにも個性があります。また違った自分が出せるかなと思います。ショートはダイナミックでハードな、シェイリーンらしい曲。みなさんも楽しみにしていてほしいです」

 他にも、新たな刺激を取り入れようと計画している。9月にはスイスに渡り、06年トリノ五輪銀メダリストのステファン・ランビエールのもとで2週間ほど練習する。7月からは、本田武史コーチに、月に数回のジャンプ指導を依頼。しかしメインコーチは据えない予定だ。

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