ほかの金メダル候補は、GPファイナル王者、米国のネイサン・チェン(19)。エール大学に入学し文武両道を目指して充実したシーズンを送っている。1月の全米選手権では、フリーで4回転4本を含むパーフェクトの演技をみせ、総合342.22点という劇的な点数を刻んだ。国内大会のため参考記録だが、全米選手権同様の演技なら、世界選手権でも今季最高点の更新は確実だろう。

 そして中国の天才ジャンパー金博洋(ジンボーヤン)(21)も、着実に調子を上げてきている。12月にあった国内選手権では「ショートで2本、フリーで3本の4回転」を成功させて300点超え(参考記録)。得意の4回転ルッツを冒頭で決めれば、生き生きした演技が見られることだろう。

 男子はほかにも個性派ぞろい。羽生と同門になった米国のジェイソン・ブラウン(24)は、スケーティングの基礎を磨いたことで演技構成点が一気に伸びた。同じく同門のチャは、4回転の精度だけでなく、ステップやスピンをまじえたプログラムの世界観が磨かれてきている。ジュニア時代から羽生の演技を間近で見て、勝つための総合力を鍛えてきた。4種類の4回転を持つ米国のヴィンセント・ゾウ(18)は、ジャンプの回転速度の速さが売りだ。どの選手も見逃せない。(ライター・野口美恵)

※AERA 2019年3月25日号より抜粋