埼玉県民が東京都民から迫害を受けている。そんな架空の日本を舞台にした映画「翔んで埼玉」が話題だ。現実でもしばしば「ダサイタマ」と虐げられるが、意外に平気そう。埼玉県民は受難の歴史をいかに克服したのだろうか。
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埼玉情報発信サイト「そうだ埼玉.com」編集長の鷺谷政明さん(39)は、ダンサーのSAMさんの実家である岩槻の丸山記念総合病院で産湯を使い、上尾で育った生粋の埼玉県民だ。
岩槻にある高校を卒業後、渋谷で映像・音楽の仕事をしていた20代の鷺谷さん。上尾の実家から約1時間かけて通勤する中、サッカーのワールドカップの時期にふと疑問がわいた。テレビで連日報道される渋谷のスクランブル交差点でのハイタッチ。だが、周りにいる東京生まれ東京育ちの人でハイタッチをやりに行く人は誰もいなかった。
「もしかしたら東京で流行っていると言われているものって、東京都民は意外とやっていないのでは……?」
「ダサイタマ」という言葉が流布した背景に、原宿の「竹の子族」の多くが埼玉県民と千葉県民だったからだという説もある。確かに、鷺谷さんにも覚えがあった。埼玉県民は地元で浮くのはイヤだが東京でなら許されると、東京でハメを外してはしゃぎがち。それもディスられる要因のひとつなのだが──。「渋谷のハロウィーンでコスプレしてるの、ほとんど埼玉県民説」が浮上した瞬間だった。
「埼玉県民にはそこらへんの草でも食わせておけ!」
「埼玉なんて言ってるだけで口が埼玉になるわ!」
埼玉県民は通行手形がないと東京に出入りすらできないといった迫害を受けている架空の日本を舞台にした映画「翔んで埼玉」。埼玉解放戦線が同じく東京に迫害されているライバル関係の千葉解放戦線と抗争を繰り広げ、群馬や栃木、茨城も巻き込みながら埼玉を解放する闘いを繰り広げるという荒唐無稽なストーリーだ。
埼玉県民からクレームが飛んできそうなこの映画。しかし意外なことに、上田清司埼玉県知事はこのように言う。