マキタスポーツ/1970年、山梨県生まれ。俳優、著述家、ミュージシャンなど多彩な顔を持つ。スポーツ用品店だった実家の屋号を芸名に。著書に『すべてのJ-POPはパクリである』『一億総ツッコミ時代』ほか。映画「苦役列車」でブルーリボン賞新人賞受賞。新刊に『越境芸人』(東京ニュース通信社)
マキタスポーツ/1970年、山梨県生まれ。俳優、著述家、ミュージシャンなど多彩な顔を持つ。スポーツ用品店だった実家の屋号を芸名に。著書に『すべてのJ-POPはパクリである』『一億総ツッコミ時代』ほか。映画「苦役列車」でブルーリボン賞新人賞受賞。新刊に『越境芸人』(東京ニュース通信社)
イラスト:大嶋奈都子
イラスト:大嶋奈都子

 お笑い芸人のマキタスポーツさんによる「AERA」の連載「おぢ産おぢ消」。俳優やミュージシャンなどマルチな才能を発揮するマキタスポーツさんが、“おじさん視点”で世の中の物事を語ります。

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 人には「興味がある」ことと「興味がない」ことがある。私は私の関心の範囲内でしか生きていないので、その限りにおいては意識的に生活していると思っている。でも、そうではない場合もある。自分のこだわりとか、主義は非日常のものにわかりやすく表れ、日常のものほど天然の嗜好(しこう)性が表れてしまうのだ。

「無意識」は誘導されやすい。

 ユニクロ(ファーストリテイリング)の柳井正社長は、服に興味のない人が着る服を作ったことが画期的だったという。

 洋服はハイブランドほど「思想」を売る。それはとても面倒くさいこと。ユニクロはそれを逆手に取って服から思想性を剥いだ。そして、誰もが着られて、選ぶ手間を省き、それを着ていることを誰も疑問に思わず、試着時も店員に付きまとわれず、シンプルで、機能的なものを作った。服なんてものに「時間」を取られず、他に時間を使うことを提案したのだ。ユニクロの隆盛は、洋服について関心の低い人たちが思いの外多かった結果。「無意識は誘導されやすい」の好例だと思う。

「音楽」と「お笑い」は?

「服」の部分を「音楽」や「お笑い」に換えて考えてみる。音楽やお笑いは非日常のもの。私はそれを生業としているから、その非日常のものを日常的に考える。すると普通の生活人が考えないようなことまで意識する。そこに面倒くささはない。そうなると、普通の生活人のそのことに対する“鈍感さ”が許せなくなってくる。いわく「なんでこんなこともわからないのか!」と(こういった選民思想はさまざまな分野にある)。私の音楽観や、お笑い観は人からしてみればとても面倒くさいものだろう。こうして「~を好き」という有意識はやがて「主義」へと化けるのだ。

「食」と「エロ」はどうか?

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マキタスポーツ/1970年、山梨県生まれ。俳優、著述家、ミュージシャンなど多彩な顔を持つ。子供4人。スポーツ用品店だった実家の屋号を芸名に。著書に『すべてのJ-POPはパクリである。』ほか。映画「苦役列車」でブルーリボン賞新人賞受賞。近刊に『越境芸人』(東京ニュース通信社)。『決定版 一億総ツッコミ時代』(講談社文庫)発売中。

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