特定技能では技能実習では認められなかった転職も認められているが、先のベトナム送り出し機関幹部はこう話す。

「彼らが何のために働くのかといえば、お金だ。隣の工場の給料が500円高ければ、みんな移動する。大混乱するだろう」

 初年度には、現在日本にいる技能実習生が、特定技能へと大量移行するとみられるほか、留学生の移行も見込まれる。東京都内の日本語学校幹部は言う。

「アルバイト先から、留学生を特定技能で採用してもいいかという相談もくるようになった。日本語学校への留学生の9割は稼ぐことが目的であり、彼らのことを考えるとそれを止めることはできない。学校としては逆に特定技能で働くための、短期の日本語留学などのコースも考えていかなければ」

 各業界も準備を急ぐ。宿泊業では9月、業界4団体が共同で「宿泊業技能試験センター」を設立した。神田裕幸事務局長は「技能試験の完成度はまだまだ3割くらい」と話す。

 一方、すでに技能実習での受け入れのあるビルクリーニング業界では「ビルクリーニング技能士3級」を技能試験のベースに置き検討を進めている。全国ビルメンテナンス協会の堀口弘常務理事は、

「技能試験の会場を海外のどこに準備するのか。技能検定員をどう準備するのか。まだまだやるべきことはたくさんある」

 拙速な法案通過に、現場も対応に追われている。(編集部・澤田晃宏)

AERA 2018年12月17日号より抜粋