図版=AERA 2018年12月17日号より
図版=AERA 2018年12月17日号より
ベトナム・ハノイ市内にある教育研修施設。全寮制で3カ月~約半年間勉強する。日本語、日本文化のほか、体力を強化する運動の授業も行われる(撮影/編集部・澤田晃宏)
ベトナム・ハノイ市内にある教育研修施設。全寮制で3カ月~約半年間勉強する。日本語、日本文化のほか、体力を強化する運動の授業も行われる(撮影/編集部・澤田晃宏)

「特定技能」という新たな在留資格で外国人労働者を受け入れる出入国管理法(入管法)改正案が可決、成立した。これによってどんな外国人がやってくるのか、またやってきた外国人労働者の権利を守ることはできるのか、様々な面で不安の声があがっている。

【写真】ベトナム・ハノイ市内にある教育研修施設

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新制度では、外国人労働者の権利を守れるかどうかにも不安の声があがる。

 現行の新技能実習制度では、監理団体や企業が実習生を受け入れるには、報酬や労働時間を明記した実習計画を作成し、機構の認定を受けなければならない。認定には賃金が日本人と同様であることを示す資料の提出も求められる。監理団体は機構による許可制で、機構が監理団体や企業を実地検査し、実習計画が守られていなければ許可が取り消され、罰則を受ける厳しい制度になっている。

「実地検査は抜き打ちで行われ、海外送金のお金の流れも確認される」(監理団体の男性幹部)

 一方、新制度では企業が外国人と契約する際、事前ガイダンスの提供や住宅の確保、外国人からの相談・苦情への対応といった支援を行う態勢が求められるが、企業にその態勢がない場合は「登録支援機関」が代行することもできる。

「『登録支援機関』は、過去に外国人を適正に受け入れた実績がある職員がいたり、外国人の方への情報提供態勢があったりすることが設立要件で、出入国管理庁への登録が必要です」(入国管理局の担当者)

 特定技能も技能実習と同じく中小・零細企業の利用が多くなるとみられ、登録支援機関に頼る企業が多くなりそうだ。外国人労働者の受け入れに詳しい山脇康嗣(こうじ)弁護士はこう指摘する。

「登録支援機関の登録要件が監理団体の許可制より緩い。登録支援機関へは人材派遣会社などの参入が予想されますが、外国人の非熟練労働者を受け入れた十分なノウハウや経験があるかは疑問です。また、特定技能外国人と企業との間に対立が起きた場合、企業からお金をもらってサポートを代行する登録支援機関が、特定技能外国人のために的確に相談に乗れるかどうか、大きな疑問です」

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