しかし、「嫁ブロック」が待っていた。同じく日銀に勤める妻は大反対。まだ子どもも小さい。分担している子育ても、超多忙な業界に行けば、妻の負担が増えるのは目に見えている。毎晩のように口論になった。

 妻に「お互い冷静になったほうがいいから文章で整理して」と言われ、書き始めると止まらなくなった。気がつくとワード16ページ分の大作に。その結果、「妻は多分、渋々諦めてくれたのだと思います」(神田さん)

 マネーフォワードの門をたたいた時の辻さんの第一声は、

「うっそー。日銀やめてくるなんて、そんなことってある?」

 転職から半年後の今年3月、辻さんは神田さんを仮想通貨事業を手がける子会社の社長に抜擢した。

「官から民、民から官へと、回転ドアをくぐるように人が動く。日本もそういう時代になってきたんだと思います」(辻さん)

(編集部・石臥薫子)

AERA 2018年11月19日号より抜粋